第2話、パーティー組むとそういうことってあるよね。


やっと一人で落ち着けるわ...。

あんなに俺の事を思ってくれるのは悪い気はしないのだが、やっぱり一人が落ち着く...。

この調子だと俺自身が落ち着くのはまだ先だな...。


そんなことを考えているとすぐに冒険者ギルドに着いた。

扉を開けると活気のいい冒険者バカどもで溢れ返っている。


「今日こそワイバーンの討伐依頼を受けるぞぉぉ!!」

「バカか!止めとけ!!お前らのランクじゃ、ワイバーンの餌になるのがオチだ!」

「なにをぉぉ!!ヤるのか!?」

「あぁ!?なんだコラ?いつでもかかってこい!!踏み潰してやんよ!」

「やれやれー!!」


毎日、毎日冒険者ギルドここは本当に騒がしい。

俺は空気のように気配を消して依頼書が張ってあるボードに向かった。

絡まれたら面倒極まりないからな...。


そもそもワイバーン討伐なんて、

ワイバーンがいつ現れるか分からない上に報酬も大したことない糞みたいなクエストだ。


俺はソロの冒険者だからそんな依頼は興味ない。安全かつ楽で高収入の依頼を探す。

ソロだから、Cランクのクエストでも十分高収入なのだが...。


「おっ!今日はコレにするか...。」


俺がボードから取った依頼は、

ダンジョンの10階層のボス[ブラックオークの槍]の納品クエストだ。

ダンジョンとは不思議なものでダンジョンのアイテムは宝箱をのぞき、

全てのアイテムはドロップされないと持ち出せない仕組みになっている。


この世界のダンジョンは今発見されているだけで20箇所と言われている。

そのうちの一つが、ジパン国の外れの街[トーキー]の中にある。

[トーキー]はとても珍しい街で人間、獣人、魔人とありとあらゆる種族が集まって出来た街である。

よその国や街や都からは掃き溜めの街なんて言われてるらしい。


そんな街に俺は2年前に来た。

来たというより居たって言う方が正しいか...。

ここに何でいるのかも、俺がどこで産まれて、どこから来たのかも何も覚えていなく、

街のど真ん中で目が覚めたのだ。


唯一、覚えてた事は自分の名前はクロムだという事と一本の剣を持っていた事。

この剣はなぜか鞘から抜けないので、

そのままこん棒みたいに殴って使っている。


他の剣を装備したいのだが、

剣自体がそれを許してくれない。

捨てても戻ってくるし、他の剣を装備しようとすると全身に痛みが走るのだ。


そんな俺が途方に暮れていたところを、

宿屋おかみさんに拾われて今もお世話になっているのが今の現状だった。



俺は依頼書をカウンターに持っていく。


「クロムさん!おはようございます!」


うさみみの受付嬢が俺に元気良く挨拶してくれる。


「おはよう。リリー。

この依頼を受けたいのだが...。」


「どれどれ。納品クエストですね。

受理しました。クロムさん、ソロなんだから気を付けてくださいね。」


「あぁ。大丈夫だ。俺はそこそこ強いからな。」


「そうですね。クロムさんは今まで受けた全てのクエストを期限内に完璧にクリアしてますもんね。」


「そうだな。俺、失敗しないので。

なんてな。たまたまだよ。俺はラッキーなだけさ。」


「うふふ。そういう事にしておきます。

次のクエストも期待しています。」


俺が受付嬢のリリーと話しているとよそから怒号が聞こえてくる。


「おらぁ!!グズ!!さっさと荷物を持て!!」


「は、はい!!」


「だからお前はダメなんだよ!!この愚図が!!」


「す、すいません...。」


きっと同じパーティーなんだろう。

ガタイの大きな冒険者が新人丸出しの冒険者をイビっていた。


「リリー。なんなのアレ?」


「あぁ...。最近多いんですよ。

新人をパーティーに入れて荷物持ちにしてるの。

結構酷い扱いを受けていて、

ギルドとしても注意はしているんだけど後を絶たないのよね。

まぁ、今のところ事件を起こしているわけではないので注意で済んでるだけど...。」


「なるほどな...。

やっぱりパーティーってめんどくさいな。

ソロで良かった。

まっ。事件にもなってないなら大丈夫だろう。俺はボチボチダンジョンに行ってくるわ。

今日は昼までには帰りたいからさ。」


「そうですか。クロムさん。

気を付けて行ってきてくださいね。」


俺はギルドを出てダンジョンに向かう。

ダンジョンに向かってる途中、目の前に黒猫が通った。

ずっと俺を見ているな。

俺は猫が食べられそうな物なんか持ってないですよっと。

ずっと見てくる黒猫を無視してダンジョンに向かった。



▼▼▼▼


彼がクロム・ヴァンデットか...。

記憶はちゃんと戻っていないようだな。

なるほど、なるほど。

こいつは楽しみだ...。フッフッフッ。


黒猫はクロムが泊まっている宿屋に向かって歩き出していた。



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