夜なんて言葉で片付けられてたまるもんか

小雨

夜なんて言葉で片付けられてたまるもんか

「おやすみ」


 私は、夜が好きなの


 なんでも許してくれる優しい夜のことが


 愛していた彼のことも


 愛してくれなかった彼のことも


 みんな平等にね




 こんな歌詞があるの


「アダムとイブが食べた果実なんか、今じゃ、千三百円で売ってる」ってね


 その曲のこと好きなの




 夜に独りで部屋のソファに腰かけて


 ほろよい 片手に


 溜まってるドラマを見たりするの


 画面に向かって


 投げキッスなんかしたりしちゃって


 惨めなんて思わないわ


 夜が許してくれるから


 でも、たまに嫌になっちゃう


 静寂は不安を煽るから


 騒がしいのを求めて


 夜の街に繰り出したりもするの


 一夜の過ちだって


 そんなに大したことじゃないの




 夜は私が求めているもの


 全部持ってるの


 それはそれは羨ましくて


 でも、たまに後悔っておみやげもつけてくれるのよ


 そのおかげで反省もしたりする


 また会うときには変わっていたい


 変わりたいの




 あなたとは


「おやすみ」で出会って


「おはよう」でさよなら




 あなたが私の心を奪ったの


 傷ついた私を


 沼に引きずり込んだの


 誰か助けて


 私はここにいるよ


 暗くて見えないかもしれないけど


 ここにいるよ


 声が出せないの


 手を握って引っ張って


 明るい場所へ連れ出してほしい


 お願い




「おはよう」




 私は幾千もの大好きな夜をこうやって乗り越える

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夜なんて言葉で片付けられてたまるもんか 小雨 @kosame1003

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