第3話:愛妻弁当ですわ

 白雪柚希はベッドにくつろぎながらスマホで調べ物をしていた。

(彼女として颯斗くんにできることって何かしら、中学から不良じゃなく真面目に同級生と色々勉強しておくべきでしたわ…)

(こっ、これは、、、)


 柚希の目に留まったのは、


《愛のこもった恋人への弁当作り》

「これですわ!」柚希は思わず叫んだ。

 隣から「姉ちゃん、夜中に大声出さないでよ。」

 弟の五規だ。

「五規、私決めましたわ。颯斗くんにお弁当を作って差し上げます!」

「えっ、でも姉ちゃん料理とかできないじゃん」

「だからこれから練習しますの!そしていつか颯斗くんの胃袋を鷲掴みに……」

 柚希は妄想の世界へと旅立った。

「まあ、頑張ってね。」

 五規は呆れながら自分の部屋へ戻って行った。

(そうと決まれば早速明日から作り始めましょう!)

 こうして柚希の弁当作りが幕を開けたのだった。


 〜翌朝〜

「うーん。これを、こうして、、こうかしら」


「あっ、できましたわ!」

「あとはこれをこうして……」

 柚希はスマホで調べたレシピを見ながらなんとかお弁当を完成させた。

「よし、完成ですわ!早速颯斗さんにお渡ししないと」

 〜昼休み〜

「颯斗くん」

「ん?どうした?」

「これ、良かったら食べてください」

 そう言って柚希は弁当箱を差し出した。

(会長の弁当。料理できるんだ、、、)

「ありがとう。」

 柚希は颯太の事をじっと見つめている。

「な、何か、、、?」

「食べませんの?」


「あ、いや、食べるよ。」

 颯太は弁当箱の蓋を開けた。

「おお、すごい!柚希が作ったの?」

「はい!」

(この唐揚げとかめちゃくちゃ美味そうなんだけど)

 颯太が唐揚げに手を伸ばそうとした瞬間……

「待ってください!」

「え?食べないの?」

「違いますわ。私が食べさせてあげますわ!」

 そう言って柚希は箸で唐揚げをつまみ上げると颯太の口元まで運んだ。そしてそのまま口に入れる。

 その光景を見ていた周りの男子生徒は

「「「「なっ!」」」」

 と一斉に声を上げた。

「うん、美味しい!」

 颯太は笑顔で言ったが周りの男子達は嫉妬の眼差しを向けている。

(くっそ〜羨ましい)

 そんな中1人だけ違う感情を持った者がいた。

 それは柚希だ。

(やりましたわ!これで颯斗くんの胃袋は私のものですわ!)

 〜放課後〜

「颯斗くん」

 柚希は颯太に声をかけた。

「ん?どうした?」

「今日一緒に帰りませんか?」

「けど、柚希の家は僕と真反対じゃ……」

「大丈夫ですわ。」

「なら、いいけど」

「やった!」

(颯斗さんと下校デートですわ!)

 〜帰り道〜

「あの、颯斗くん」

「ん?」

 颯太は柚希の方を向いた。すると柚希は颯太の頰にキスをした。

 周りから黄色い歓声が上がる。

「……!?」

 颯太の顔が一気に赤くなる。そして柚希は笑顔で言った。

「また作ってさし上げますわ!」

「あ、ありがとう」

(会長……大胆すぎるよ)

 〜次の日〜 今日もまた弁当箱が颯太に渡された。

「颯斗くん!どうぞ召し上がってください!」

「あ、ありがとう」

 颯太は恐る恐る蓋を開けた。するとそこには昨日よりも更に豪勢な料理が入っていた。

(すげぇ、これ全部手作りなのか?)

「どうですか?」

「うん!めちゃくちゃ美味しいよ!」

 そう言って颯太は笑顔で答えた。

(けど多いな、、、)

「あの、柚希。」

「はい?」

「これ全部食べ切れるかな……」

 颯太は苦笑いしながら言った。すると柚希は満面の笑みで答えた。

「大丈夫ですわ!私が食べさせて差し上げます!」

(え!?)

「いや、それはちょっと恥ずかしいというか……」

「遠慮しないでくださいまし!さあ早く口を開けてください!」

(これは逃げられないな……)


「あ、はい……」

 颯太は諦めて口を開けた。すると柚希は箸で唐揚げを掴み颯太の口の中へ運んだ。

「どう?美味しい?」

「うん!すごく美味しいよ!」

(けど量が多すぎて……)

 〜その次の日も〜 今日もまた弁当箱が渡された。

「颯斗くん!召し上がってくださいな!」

「あ、ありがとう」

 颯太は恐る恐る蓋を開けた。するとそこには昨日よりも更に豪勢な料理が入っていた。

(やっぱり多いな、これ以上は食べ切れる量じゃなくなる)

「あの、柚希。」

「はい?」

「流石にこの量を食べるのは無理じゃない?」

 颯太は少し困ったような表情で言った。

 すると柚希は少し涙ぐみ。



「そう……ですか……」

 と言った。

その瞬間男子生徒が颯太を睨んだ。

 颯太はその様子を見て慌てふためいた様子で言った。

「あっ!いや、でもやっぱり食べたいかも!柚希が作ってくれたお弁当!」

「本当ですか?」

「うん、食べるよ!」

(なんとか誤魔化せた……)

 颯太がほっとしたのもつかの間、柚希は満面の笑みを浮かべた。

「でしたら、頑張って完食してくださいね♪」

「は、はい…」


会長の努力と継続力に驚きが隠せない颯太なのであった。

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