第44話:自警団員アリシア 22
「やっほー! アリシアちゃーん!」
「順調に回復しているようだな」
「いやー、よかったよー!」
次にお見舞いに来てくれたのはシエナ、ゴッツ、ダレルだった。
この中だと事情を知っているのはシエナとゴッツだけで、ダレルはアーノルドの説明通りポーションで助かったと思っている。
故に、事情を知っている三人は話を合わせなければならない。
「なあ、アリシアちゃん」
「な、なんですか、ダレル分隊長?」
「団長が持っていたっていうポーションなんだけどさぁ――」
まさかいきなりポーションの話が出てくるとは思わず、三人は内心でドキッとしていた。
「――あれ、どこで売っているのかわからないかなぁ?」
「……う、売り場、ですか?」
「そうなんだよねー。だってさ、すごい効き目だったじゃん? だから、俺も念のために買っておこうかと思ったんだけど、教えてくれないんだよね」
「ご、ごめんなさい。私も売り場とかについてはわからなくて」
「だよなー」
上手く答えられただろうかと心配になったアリシアだったが、ダレルも最初から彼女が知っているとは思っていなかったのか、すぐにため息交じりに返事をしていた。
「だから言っただろう。アリシアが知っているわけがないと」
「いや、でもさぁ。団長がポロリと漏らしている可能性だってあるわけじゃん?」
「いやいや、ダレル分隊長じゃないんだから、団長がそんなことするわけないじゃないですか」
「……なあ、シエナ? お前、俺のことバカにしてるだろう?」
「えぇー? そんなことないですよー? ただ、言っても聞かない人っているよなーって思っただけですよ?」
「絶対にバカにしてるよな、この野郎!」
ゴッツとシエナのおかげでだいぶ話題が逸れてくれたと、アリシアは顔には出さなかったが内心ではホッとしていた。
「ったく、お前はずーっと訓練場の掃除をしておけばいいんだよ!」
「あぁー! ひっどいなー!」
「あの、シエナさん。訓練場の掃除って?」
「「……あ」」
「こいつらは、全く」
「ゴッツ分隊長も何か知っているんですか?」
シエナとダレルがヤバいと言わんばかりの声を漏らすと、ゴッツが頭を抱えて呟く。
それを見たアリシアは、三人の中で最年長のゴッツに声を掛けた。
「まあ、隠す必要もないんだがな」
「何があったんですか?」
「シエナはアリシアとヴァイスが森に入ったことを知っていたんだろう? それに激怒した団長が、一ヶ月の訓練場掃除をシエナに課したんだ」
「えぇっ! そ、そうだったんですか、シエナさん?」
心配そうにシエナを見たアリシアだったが、当の本人は肩を竦めながら仕方がないと口にした。
「まあ、覚悟はしていたからね。むしろ、掃除だけで済んでよかったとすら思っているわよ」
「確かにな。本当だったら減給だったり、新人と交ざって雑用なんかさせられてもおかしくはないもんな」
「ごめんなさい、シエナさん。私のせいで」
「違うわよ。今回のはアリシアちゃんのせいじゃないわ。私が判断してそうしたんだからね」
結果としてはシザーベアを倒せただけではなく、自警団にも被害は出ていない。
だが、アリシアの聖女の力が発動していなければ、アーノルドは死んでいただろう。
そう考えると、やはりアリシアにとっては恐怖以外の何ものでもなかった。
「……やっぱり、私も何か罰を受けるべきだと思うんです」
「それを決めるのは私たちではない」
「そうだよなぁ」
「うーん、私は別に必要ないと思うんだけどねぇ」
「ううん、ダメだよ。お父さんに相談してみる。シエナさんのお手伝いでもいいからさ」
「……アリシアちゃん、あなたはやっぱり良い子だわ!」
思いがけない事実を知ってしまったアリシアは、その夜アーノルドに相談すると、折れる気配を見せなかった彼女に負けてシエナの手伝いをお願いしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます