ケタ外れにマト外れな異世界チート生活~念願の異世界転移、思ってたのと違いすぎる~
もろこし
プロローグ
月曜日。1週間で最も憂鬱な日。鳴り響く目覚まし時計の音と共に、私は目を覚ます。
「うう……起きたくない……起きたら1週間が始まる……」
目を開けると、転生して悪役令嬢になっていた――なんてことはなく、見慣れた天井が視界に広がる。体を起こして、時間を確認する。学校の時間が、刻一刻と迫っている。
「やばい、着替えなきゃ……」
すぐに制服を着て、急いで階段を下りる。そして顔を洗って、髪を整えて、玄関で靴を履いて……。
「お母さーん! 行ってきまーす!」
「朝ご飯はー?」
「今日はいらなーい!」
何の変哲もない、いつも通りの一日が今日も始まる。
私、伊藤茜はどこにでもいる平凡な女子高生。自慢できるような特技もなければ、これといって苦手なことがあるわけでもない。成績は学年のど真ん中で、趣味はアニメ鑑賞とかラノベを読み漁ったりとか、そういうありきたりなもの。
「ま、現役JKっていう貴重なステータスがあるんだけどね~」
「……女子高生って、そんなに特別かしら?」
「そりゃあもう需要ありまくりでしょ。てか、ないと困る。私の唯一の長所だし」
一緒に登校している彼女は一ノ瀬玲。容姿端麗で、有智高才。おまけに大企業の社長の娘。そして私と同い年、つまりJKというわけだ。
……う、この敗北感……。
「でも、茜には茜のいいところがあると思うわよ?」
「どういうところ?」
「それは…………面白いところとか」
「ちょっと考えたよね今。しかもなんとか絞り出したやつだよねそれ」
「さあね。ほら、急がないと遅刻するわよ?」
そういうと怜は少し早歩きになる。私もそれに後ろからついていく。
もう何度も通った横断歩道を渡ろうしたその時。
――物凄いスピードで、車がこちらに突っ込んでくるのに気づいた。
「は、ちょっ、れい――」
状況を理解できな……いやいや、考えてる場合? どう考えてもこれ直撃じゃ……。どうしよう。躱せる? いやいや間に合わない。ジャンプ? 少なくとも、足はもげそう。
……ていうか、なんでこんなに思考が巡るんだろう。もしかして、死ぬ直前は世界がゆっくりに見えるとか……そういうの?
「あっ……」
切羽詰まった私にできたことは、親友の背中を押すことだけだった。
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