ハーレムエンドから始まるオタクボッチの俺が嘘リア充とバレるまで
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
第1話:いきなりクライマックス
「ヒロに大事な話があるの。今日の放課後教室にいて」
朝っぱらから学校の下駄箱のところで、ショートカットの部活美少女「エマ」に言われた。
部活の朝練帰りなのだろうか、少し髪が乱れているようだ。
それでも汗のニオイは全くせず、その代わりにデオドラントのほのかな香りがした。矛盾していると思うけれど、「無香料の匂い」だ。
彼女の印象の一つがこの匂い。
無香料の匂いとエマ本来の匂いが混ざっているのか、他の人にはそれを感じない。
俺はこのニオイを好きだと思っていた。
そして、エマに呼び止められた用事は彼女からの告白だと直感的に理解していた。
彼女はそれだけ言うと、「じゃーねー!先行ってるから!」と言って走っていってしまった。
身長156センチの女バス部員が俺に用事とか、告白以外に思いつかない。
エマぐらいの美少女に告白されるのならば、中学時代の俺なら天にも昇るような気分だっただろう。
だけど、今はまだ割り切れない気持ちを抱えたままだ。
もし、告白されたら考えてちゃんと答えるけど、色のいい返事ができるとは思えない。
***
今朝は少し早く登校したので、廊下にも人はまだ少ない。
考え事をしながら廊下を一人歩いていると、これまた美少女に声をかけられた。
「あ、兄さん ちょうどいいところに。お弁当渡しますね」
彼女は肩にかけていたカバンから弁当の包みを取り出す。
小柄な彼女には似つかわしくない大きさの弁当箱。
そして、ブルーの包み布。
この弁当は俺の分だ。
俺は目の前の美少女「なごみ」から弁当を受け取った。
「兄さんのお弁当、重いんですからね」
「はい。いつも感謝しています」
同じ制服なのに、なごみが着るとどこか和のテイストを感じてしまうのは何故だろうか。
もちろん、男女の制服の差はあるのだけれど、ブレーザーとは紛れもなく洋服だ。
それなのに、なごみの着こなしなのか、立ち居振る舞いなのか、どこか和のテイストを感じてしまう。
俺のことを「兄さん」と呼ぶ同い年の彼女は、俺の義理の妹だ。
別に一緒に住んでいるわけではないので、ハッキリ言ってしまえば赤の他人かもしれない。
しかし、ちょくちょく弁当を作ってくれている。
学校内で俺の関係者だと思われることにメリットがあるとは思えないので、「ヒロくん」と呼ぶように言っているのだけれど、中々そう呼んではくれないらしい。
「学校内では『ヒロくん』でお願いします」
「兄さんは、兄さんです。私の好きに呼びます」
プイとむこうの方を向いてしまった。
「あ、そうだ」
なごみが思い出したようにこちらを向いた。
「今日、放課後教室に残っていてください。こちらから迎えに行きますので」
なごみのクラスは俺のクラスの隣。
放課後に一緒に帰ることなど全くないので、どんな用事があるのか。
どちらかというと、いつも怒られてばかりなので、あまりいいこととは思えないのだけど……
「分かったよ」
そう答えると、なごみはスキップでもしそうな勢いで行ってしまった。
俺は言った後に気づいた。
そう言えば、放課後はエマが教室にいるんだった。
もし、本当に告白だとしたら、隣にクラスの女子が俺を迎えに来るのはダメっぽい。
どうしたものか。
また悩みの種が増えてしまった。
***
教室に着く前にトイレに寄ったとき、男子用、女子用の間に「みんなのトイレ」があった。
そこからできたのは、クラスの王子様こと「イツキ」だ。
こいつは、髪の毛がちょっと長めでサラサラヘア。
目は切れ長で、別にメイクをしている訳ではないのに歌舞伎の
唇は薄く、キリっと締まった印象。
いつも表情を崩さない感じか。
線も細く、俺と同じ制服を着せても少し余裕がある感じで なんかカッコいい。
クラスメイトの女子からも人気があるのは もちろんのこと、1年の女子からも慕われている。
所作や声、発声などどれをとっても「王子」という感じ。
「お、おはよう、ヒロ。変なところで会ったね」
「おはよう、イツキ。そうだな」
「あ、そうだ。ヒロ、放課後ちょっと時間いいかな?」
「ああ、構わないよ」
「ホームルームが終わったら声をかけるよ」
人差し指と中指でスチャッと構えて言うくらいのスマートさがあった。
イツキはそれだけ言うと、何か用事があるのか教室とは違う方向に行ってしまった。
……しまった。
また放課後だ。
今日はみんなで俺のサプライズお誕生会でもしようというのか。
ちなみに、俺の誕生日ではないので、あり得ないと思ったけれど、言っただけだ。
***
やっと自分の教室に着いた。
今朝は、いつもより色々な人に会うような気がする。
「おーっす!」
リア充の俺はデカい声で挨拶をして教室に入らないといけない。
教室に入ると、すぐに白ギャルのラムが笑顔で駆け寄ってくる。
「おはー!ヒロー♪」
彼女の髪の毛は白に近い栗色で、肌も白く、制服は着崩していて、まさに白ギャル。絵にかいたような白ギャル。そして、とても可愛い。
彼女の名前は
アニメのキャラクターと同じ名前なので「だっちゃ」とか「ダーリン」とか「浮気」とかの単語を上手く使う面白いヤツだ。
「ダーリン、今日はなんか ちょっと難しい顔してるっちゃ?」
「俺をダーリンと呼ぶな。周囲に変な誤解を招くから」
にししと笑う彼女の笑顔は、時に天使かと思わせる。
髪の色も含めて彼女は白を基調としている感じなので、いつ背中から白い翼があらわれても俺は驚かない。
「ダーリン、今日の放課後カラオケ
彼女は基本博多弁。
ここがまた一段と可愛い感じがする。
「今日は何か放課後 色々ありそうなんだよ」
「じゃあ、待っとくけん、駅までチャリ乗せてってー」
まあ、そんなに時間がかかる用事ではないだろう。
「おけ」
気付けば、また放課後の用事が増えていた。
***
俺は、カバンを机の横のフックにかけると、1限目の教科書を机に入れようとした。
ふと気づくと、机の中にはルーズリーフを折って封筒みたいな形にした手紙が入っていた。
こんな控えめなことをするヤツは、俺の知る限り全てが普通の「トト」だけだ。
俺らの集まりの中では、彼女は少し控えめ。
そして、単に紙を入れるのではなく、ちょっと封筒みたいに折ったりして、「女子力」というのか、「女の子力」というのか、可愛らしい面を持った子だ。
手紙を開く前に、後ろを振り向き、2つな前後ろのトトの顔を見た。
彼女は肩くらいまでの髪で、メガネの委員長タイプだけど、派手なことを好まず、いかにも「普通」という感じの女子。
本人も言うのだけど、特徴が無いのが特徴らしい。
だから、メガネをかけてメガネっ子を演出している、と。
俺と目が合うと顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
手紙には何か言いにくいことが書いてあるのだろう。
周囲の目を気にしつつ、そっと開いて読んでみた。
『放課後お話があります。少しだけ残っていていただけませんか?』
また放課後だ。
本格的にお誕生会のサプライズを疑い始めた。
誰かが俺の間違った誕生日情報を流したのではないだろうか。
こうなったら、1人でも5人でも同じような気がする。
俺は再び後ろを向いて、トトにサムズアップしてみせた。
トトは、再び真っ赤になって下を向いてしまった。
もしかして、これも告白じゃないよね!?
***
席について、ホームルームまで寝たふりを決め込もうと思ったら、肩をポンと叩かれた。
今度は何だと顔を上げると、無表情なショートカット美少女「ネコ」が立っていた。
普段無表情で半眼なので、彼女の感情を理解するのは難しい。
「放課後、残ってて」
それだけを ぼそりと言って自分の席に戻っていってしまった。
何だよ、また放課後かよ。
今日は、何があるって言うんだ。
***
机に肘をついて、遠くを眺めているのは「ヒカル」。
彼女に目が留まった。
可愛い系が多い俺の周りで、どちらかというと美人系。
いつも「困ったなぁ」というような表情をしていて、アンニュイな感じ。
話しかけてもあんまり相手にはしてくれない。
学校外に大学生とか社会人の彼氏がいるらしい。
今日も俺のことは眼中にないらしい。
***
「おおおおおおおおおーーーー!」
廊下が騒がしい。
きっとあいつだ。
バターンと教室のドアが開けられると、飛び込むように教室に入ってきた。
「セーフっ!」
脳筋男子ノリタカだ。
教室に飛び込むと同時に、丸めた教科書でパカーンと頭を叩かれた。
「セーフじゃねえよ。アウトだろ」
教室には既に担任の田畑先生、通称バタやんが既にいた。
ノリタカは男バスで朝練に行っているはず。
それでも、毎朝遅刻のような入り方をする。
何か早く来ることができない理由でもあるのだろうか。
***
女バスのショートカット部活少女「エマ」
「だっちゃ」でおなじみ白ギャル「ラム」
メガネの(雰囲気だけ)委員長「トト」
無表情気まぐれショートカット「ネコ」
切れ長の目のイケメン貴公子「イツキ」
脳筋男バス「ノリタカ」
そして、あんまり相手にしてくれない、困ったなぁ系の美人「ヒカル」
ここら辺がよく絡んでいるやつで、それとは別に、義理の妹「なごみ」がいる。
こいつは隣のクラス。
まだ朝のホームルームの時間だというのに、なんか今日は1日分くらい疲れた気がする。
放課後になにが起こるのか、俺はまだ知らない。
そして、彼ら彼女は、俺が実は陰キャボッチであることをまだ知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます