ラストワールド〜最弱の勇者と最強の魔の王〜

シロトクロ@カクヨムコン10準備中

プロローグ 世界の終わりと最後の冬

【最後の冬】

 世界は終わりを迎えようとしていた。

 この世界の住人であれば誰でも百年以上前から知っている事だ。


 最初に気づいたのは、どこかの学生だった。

 彼が所属していた大学では世界最大級の望遠鏡を保有しており、その学生は取り憑かれた様に宇宙ばかり見ていた。その結果は先に述べた通りで人々に絶望という未来をもたらせた。

 気付かなければ、人々の未来も少しは変わっていたかも知れない。


 今更、そんな事を考えても仕方がないが——


 その存在に気付いてからの半世紀、全世界のありとあらゆる分野の天才達が研究を重ねて、最初の五年でその星がこの世界に衝突する確率が九十九パーセントを超える事が明らかとなり、その時がこの世界の終わりを意味するのだと理解した。


 それからの四十余年。ありとあらゆる可能性を加味して、それを阻止する事に全世界が協力した。


 それ以前の世界では、人と人が殺し合いを行うという愚かな行為に満ちていた。けれども、この世界の終りという事実を前に人々は協力する事を覚えた。


 それも、今の世代が生まれる前の話だ。


 約半世紀—— あらゆる可能性を模索してきた人々は一つの答えに辿りつく。改めて発表する事もないその事実は半世紀後間違い無くこの世界は、あの星の衝突で終わるという事。


 ある者は他の星への移住を考えた。


 近づく星の軌道を変えるという、途方も無い事に人生を捧げた者もいた。


 天才達は自分の計算の方が正しいと、先人達が出した答えを疑い、さらなる議論を重ね、幾度も挑戦を試みたが、先人達の出した結論が何よりも正しいと、誰よりも理解していた。


 ある国の暴君は、国民を犠牲にしてその星の破壊を試みた。


 そして多くの人々は——


 神という不確かな存在に祈った。


 それら全てが虚しく、価値が無い事を知った人々は狂ったように生き、死んで行った。


 どれだけの死が世界を満たしたのか——


 残った世界には死んだように生きる世代が残り、その世代の子供達を大人達は“終りの世代”と呼んだ。

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