本殿の奥から来る者
栄養剤りぽべたん
バイト帰りの一コマ
その日はまだ、アルバイトを始めて数日くらいだった。
居酒屋でのアルバイトは初めてで、友達のフォローもあり慣れ始めた頃に、帰り道でダベるかーと、自転車を押しながら少し迂回して神社の
そう、自転車で
その神社は階段も3つほどしかなく、奥行きも小さい神社。
本殿へはせいぜい20メートルもあるかどうかくらい。
そして階段から本殿へはコンクリートで整地されている。
横道から神社へと行ったので、鳥居も通らず、自転車を友達と笑いながら押して神社へと入ったのを覚えている。
本当に何も内容がない、くだらない話を友達と階段を上り終えた辺りの場所に自転車を止めて、タバコを吸いながら自転車のサドルへと腰掛けて話しているとー
ふと、なぜか気になって友達から本殿へと目をやった時、本殿に垂れ下がっている
その日は無風。それに風が吹いていたとしたら
「…なぁ、アレ2枚だけ揺れてね?」
友達は自転車に座って本殿へと背中を向けていたので、一切気付いておらず、俺が声をかけたことで初めて気付いた。
「…おい、やばいかも知れんわこれ。」
友人は以前から霊障がひどいらしく、沖縄へ修学旅行に行く前に、塹壕跡に入ったりするということで
その後からずっと数珠を身に着けているという友達。もはやアクセ感覚なのだろうが、その時は本当に安堵したのを覚えている。
つい無言になる俺と友達。つけていたタバコから紫煙だけが辺りを漂う。
その間も
「…ま、時間も遅いし帰るかぁ…」
そういいながら二人とも自転車を押そうとしていると-
じゃり、という砂を踏む音が本殿の奥の闇の中からした。
思わず顔を見合わす。本格的にナニかが来ているのかもしれない。
そしてその後すぐ-
枝を踏み折る、パキッという乾いた音が神社に響いた。
「りぽべ、急げ!」
友達が足音の方へと向けて、その日もつけていた数珠を腕から外して投げつける。
大慌てで階段へと自転車を押し、逃げ去ろうとした時にもまた枝を踏み折る音が聞こえてくる。
パキ、じゃり、と近づいてくる音。
祭りの時期じゃなくて掃除してないから、木から落ちた枝がその辺に転がっていて踏み折る音がするんだろう、とか
こんな夜中に神社(本殿)の奥から人がくるわけねーだろ!とか頭によぎるが全力で階段を降り、道に出た辺りで自転車へと乗る。
全力で立ち漕ぎをし、神社から逃げていると-
神社の方から聞こえる、木の壁を叩く一発の音。ドォンと鈍い音が辺りに響く。
もう振り返るとかそんな余裕はない。ひたすら立ち漕ぎをし続け、神社から逃げた。
*********************
翌日、気になったので昼間に件の神社へと赴いた。
夜のその神社はもう既にトラウマになっているので昼間に赴いたのだ。
枝とかめっちゃ落ちてんなぁ、とか考えながら友達が数珠を投げつけた辺りへ目をやると-
粉々になった数珠が散らばっていた。
思わず目が点になる。キレイな黒い石が連なっていた数珠は何度見ても明らかに粉砕されていた。
-…何も見なかったことにしよう。-
そう思い、俺は今日は境内に乗り上げなかった自転車へと乗り、自宅へと帰宅したのであった。
※友達には翌日に神社に行って数珠が割れた話はしていません。おそらく物凄く気にすると思うので。
本殿の奥から来る者 栄養剤りぽべたん @ripobetan
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