45 待っていた者
休憩が終わった一行は、ガルベシアの城塞跡へ改めて向かった。
先頭は本田で、彼は草を乱暴にかき分けながら進む。
「しかし、でかいな」
石田が何度目かの嘆息をした。
「どうやってこんな物作ったんだ? 三千年前」
「ピラミッドだってまだ謎が多いんだ、考えるのはよそうぜ。それより帰ったら何する?」
立花の意識はもう元の世界に帰還しているようだ。
だが白夜は気が重かった。
例え封印がなって元の世界に帰れても、死んだ仲間達はそのままだ。
元の世界でどんな言い訳を彼等の親にすればいいのだろう?
白夜が悩んでいる内に、城壁へとたどり着いた。
「おい!」と一番前の本田が驚きの声を上げる。
「これ、何で出来ているんだ?」
三年四組の皆は駆け寄り、本田が触った城壁を撫でる。
確かに妙な感触だった。
すべすべしているのに石よりも遙かに硬く、なのに散らばっている破片はプラスチックのように軽い。
「……古代魔法帝国か」
思わず呟いていた。恐らく白夜達のいた2022年よりも文明が進んでいたのだろう。
だがそれはもう、遙か過去。
……大魔道士レイスティン。
彼は改めて斉藤和樹の体を奪った魔法使いに戦慄を覚えた。
超文明をたった一人で滅ぼしたのだ。
「お待ちしていました、皆様」
横合いから声をかけられたのは、その時だ。
ぎょっと皆の視線が動くと、そこには派手な衣装の美しいエルフが見事な姿勢で立っていた。
その顔に見覚えがある。
エルス王国の女王シャーニナの愛人の一人、アンデレとか言う男だ。
「何だお前?」
誰もが呆気にとられる中、本田が訊ねた。
「本田様、カティア殿下に大変なことが起こりまして、このアンデレが急いで駆けつけてきた次第です」
「何だって!」
本田の顔色が変わり、早足でエルフへと近づいた。
「待て!」白夜が制しようととしたが、それをかき消す絶叫が傍らから上がる。
「そいつに近寄るな! 本田君っ」
力角のそんな大きな声を白夜は始めて聞いた。
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