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冷蔵庫のものに名前を書いておくなんてのも引いちゃうけど、当たり前のように他人のぶんまで毎食つくる気満々というのもどうだろう。いまどき夫婦だって家事分担の時代だ。
それとも掃除洗濯は頼んだ、て、ことだろうか。それならそれでも構わないけど、
「博士くん、食事だけど、」
「あ! それから、これ!」
「あの、はなしを、」
相変わらず、人のはなしをまったく聞かない。
博士くんは思いだしたように部屋へ引っ込むと、マーロウの紙袋を手に戻ってきた。
「これ! なんですか! これ!」
「あ、」
そうだ、きのうは歓迎会やらなにやらであわただしく、お土産のつもりで買ってきたパウンドケーキを、彼の部屋におかせてもらったのだ。帰ってからはなせばいいと思っていたのを、しっかり酔って、すっかり忘れていた。
「お土産ですか⁉︎ ぼくに!」
身をのりだしてくるから思わず仰反る。なんだかもう、最近の子は距離感がおかしい。彼だけだろうか。
「そうですね、そうなんですね!」
丸い目をキラキラ、そんな目で見ないでほしい。いくらもするものを贈ったわけじゃない。
「嬉しい! ぼく、お土産なんてはじめてです!」
え、そうなの?
「これは! 夜ご飯のあとにいただきましょう!」
大事に抱えている。
「よ、喜んでもらえて、な、によりだよ。」
努めて冷静を装うけど、それをいうならこっちもそんなに喜んでもらうのははじめてだ。
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