第一章ー7 『二夜目』
⚫『二夜目』
学校の裏門に立って、なるほどとわかったことがある。
部室棟とケヤキの大木の陰になって、通りからは三年一組の教室が見えない。また裏手は山なので、電気が
時刻は夜の二十一時。学校にいるにはおかしな時間だ。
でも正太には、どうしてもやらなければならないことがあった──。
「やっぱり
月森はぴょんぴょんと跳び上がっている……わけではないが、そう感じさせる雰囲気だった。妙に
日中の
クールなお姫様然とした印象まで薄れていて、昼間とは別人だ。
「俺が目指すわけねえだろ」
月森は軽口のつもりだったろうから、少し強く返しすぎたかもしれない。
「でも今日も来たじゃない、夜の学校に」
「それは……」
本当に今日来るべきかは、迷った。
実は来ない方が、今までの平穏が守られるのではないか。そうも思った。
だいたい夜の学校に来ることは、当たり前の話だが、やってはいけないことだ。
月森とこれ以上かかわると、より深みにはまってしまうのではないか。
でも彼女も夜の不眠症という問題を抱えている。図らずもそれを知って、なのに無視し続けるのか──考えれば考えるほど、頭がぐちゃぐちゃになった。
だから最終的に
「誰でも東大に行けるってのは、ありえない。そこをはっきりさせたくて今日は来た」
そう、誰でもはありえない。ありえてはいけない。
月森は「証明して、納得させましょうか?」とまで言っていた。また夜に余計な雑念がちらつかないよう、そんな意見は
それは夜の学校にもう一度侵入してでも、やるべきことだった。
「
月森がすんなりと話題に入るので、正太も早速本題に入る。
「……俺も多少は調べてきたんだ。例えば都道府県別の合格率なんかを」
「へえ。せっかくだから、聞かせてもらおうかな?」
椅子に座る月森が、正太を迎え撃つかのように足を組んだ。
二人きりの夜の教室は、まるで決闘場のように正太には思えた。
「まず東大合格者のうち、東京出身の学生が占める割合は三割だ。関東圏まで含めればその比率は六割。さらに近畿も入れると七割を超えて八割に近づく。東大合格者はいわゆる大都市圏の人間がほとんどなんだ。田舎ってだけでチャンスは大幅に減る」
「単純に、都市圏の人口が多いからじゃないの?」
反論は想定済みだ。
「人口比を考慮しても東京からの合格者が圧倒的だ。東京からの合格者は高三生千人あたりおよそ十人。逆に合格率の低い県は、千人あたり一人以下のところもある。つまり合格しやすさに十倍の差があるわけだ」
「……他にも根拠があるの?」
「高校で受けた全国模試の俺の偏差値は……五十ちょっと、最高でも五十五、上位三十%の順位だ。大学志願者はざっくり六十万人だから、仮に最高の偏差値五十五で考えても、俺は十八万位ってことになる。……実際はもっと下かも」
それでも悪くはない。平均より上だ。真面目にやっているのだから……そのくらいはできてもいいと思う。
「でも東大の偏差値は七十を超える。上位二%だ。俺がそのレベルにたどり着くには、十七万人を……下手すりゃもっと多くの人間を、今からごぼう抜きしなきゃいけない」
あまりにも現実感がない話だった。
「俺は今でも真面目に勉強はしている。それでこの程度の順位なんだ。そんな人間が、偏差値を七十に上げられるか? 無理だ。どう考えても」
さらに
「今、東大の合格者は一部トップ校への偏りが進んでいて、東大合格者三千名のうち半分近くがわずか三十校から輩出されている。全国には五千校も高校があるのに、だ」
特に中高一貫私立の東大受験への力の入れ具合は
東大受験は、幼少期から先取りに次ぐ先取り学習をした、勉強エリートたちが戦う世界へと変貌していっているのだ。
「田舎の、進学校でもない高校に甘んじている普通の人間は、東大には届かないんだよ」
もちろん地方の公立校にも超秀才──『地方の怪物』と記事では書かれていた──がいるのは認める。でもそれは、一つの学校に一人いれば奇跡の明らかな例外である。
「なるほど……よくわかったわ。
「納得してくれたのなら……」
「まず、真嶋君の大きな思い込みを打破するところからね」
余裕を崩さぬ態度で、三日月形のピアスを輝かせる月森は言う。
「……思い込み? 数字の根拠もあったぞ」
「大前提として、大学受験を勘違いしているわ、真嶋君」
月森は席を立つと、教室前方へと移動する。
「受験はね、頭のいい人順に受かるものじゃない。試験で、合格点を取った人が受かるものよ」
月森は教壇の上に立つ。
夜の教室で、教師役一人、生徒一人の授業が始まる。
「東大の二次試験の合格最低点、知ってる?」
「いや……でもきっと高いだろうから」
「約六割よ。六割取れればいいの」
案外、低いとは思った。
「それだけ難しいってことだな」
「でも、いくら難しいといっても、本質的には高校生が履修すべき範囲内の知識で解けるものよ」
「おまけにすべての科目で六割を取る必要すらない。受験とは、総合点の勝負だから。
例えば東大の文系の二次試験の場合。
外国語が120点。国語が120点。地歴が120点。数学が80点。これで計440点満点。
仮に帰国子女で英語が大得意の子が、外国語で120点満点を取ったとする。
二次試験の必要最低点を260点と考えれば、足りないのは140点。
国語50点、地歴50点、数学40点でも合格。
もっと極端に国語70点、地歴70点、数学0点でも合格になる。
どれだけ苦手科目があってもいい。点数を取るための戦略が立てば、勝てる。
頭のよさの順位で決まるわけじゃない」
数字遊びではそうなるかもしれないが。
「とはいえ頭がよくないと……」
「頭がよいとは、どういうこと? よく気づくこと? 発想力があること? 整理がうまいこと? 考えるスピードが速いこと? 実際は色々とあるんでしょうね。
でも受験に関して言えば、そんな頭のよさは、必要ない」
「その言い方はむちゃくちゃすぎるだろ……」
「必要十分な知識をつけ、その知識を受験日まで保持し、試験中に適切に取り出せること。
大学受験に必要なのは極論すればそれだけよ。そうでしょ?」
「……いやでも、数学とかは発想力がいるだろ」
「大学受験の数学は暗記でもある程度は戦えるわ。解法パターンを覚えるだけで初級問題なら十分対応できる。そういう風に見れば、ね。そんな意識で数学を見たことある?」
なかった。
わかるものはわかる。わからないものは自分じゃわからない。……そうじゃないのか。
「
「赤ちゃんだって……?」
「ばぶー」月森が口にちょんと親指を当てて、おしゃぶりのふりをする。
「え? ばぶー?」
「…………真顔で問い返さないで。…………場を和ませるのに失敗したわ」
「……とにかく。
「俺は、無理だろ」
「でも言葉を知らない生まれたての赤ちゃんは、母語が英語の親の下で育てば、ただ生きているだけで、それくらいの力をつけられる。これは誰でもでしょ?」
月森がまっすぐに
「真嶋君は、本気の勉強をしたことがある?」
「俺は、それなりには真面目に」
「真面目じゃなくて、『本気』よ。『魂を込めて』でもいいわ」
月森の圧に、嫌でも自分の心の内がえぐられる。
本気で、魂を込めて。……自分は真面目に勉強をしている。言われたとおりに、世の中で推奨される予習だって。斜に構えた捉え方をせず、なにも考えずに──なにも考えずに?
なにも考えずに、『本気』で『魂を込めて』勉強ができているのか。
自分の勉強は本当の意味で真面目だったのか?
混乱し始めた。そこに、さらなる言葉が降り注ぐ。
「まだ真嶋君は、東大に受かるための勉強も、受験勉強も、もしかすると本当の学びすらも経験したことがない、赤ちゃんなの。
「……高校の勉強を同じだとするのは無理があるだろ。俺なんて、説明を聞いてもわからない時はわからないし」
「そこも大きな勘違いね。本来、『わからない』、『できない』ことこそが勉強よ」
またもや月森が、正太の中にある当たり前の価値観を揺さぶってくる。
自分の考えを譲るはずがないのに。──どうにかなってしまいそうになる。
「考えてみて? もし先生の話を一度聞いて、教科書を一度読んですべてわかって、テストで満点を取れたら、その子って勉強の意味がある? それは完全な理解力と記憶力があるだけで、勉強をしているとは言わない」
勉強という言葉の意味を深く考えたことは、なかった。
「勉強にはね、『できない』時間しかないと言っても間違いじゃない。
その『できない』時間の積み重ねの先に、やっと、ほんのちょっとの『できた』がある。
だから真嶋君の『わからない』は、とても正しいの」
「……けど、わからないままじゃ」
正太は当たり前の反論をする。それくらいしか反抗の手立てがない。
「その『わからない』にとどまることができれば、いつかは『わかる』がやってくる。
赤ん坊の話に戻るけれど、初めは言葉の概念すら知らない赤ちゃんも、わからない時間を積み重ねれば、いつの間にか言葉を操れるようになるでしょ? それと同じ。
じゃあ、東大に行くために必要なことはなにか、もうわかった?」
理解はできている。でも理性がそれを拒もうとする。
「『わからない』にとどまり続ける、覚悟よ。
なんでもすぐにわかって、どんな問題でもすぐ解けて、望む成績を取れる……そんなありえないことを想像するから、おかしくなるの。
初めから『わからない』に居続けるつもりでいればいい。それが勉強なんだから。
これは、才能がないとできないこと?」
我慢し続けるのも才能だと一方では思う。でも才能と言い切ってしまうには、あまりにハードルが低いから二の足を踏む。
とはいえ、と
「勉強に意義を感じていないのに、覚悟を持つのは難しいとも思う。
目標があればできるけれど、そんなものあればとっくに勉強を始めているだろうし。
勉強してもしなくても、結果が一緒に見えるなら、身は入らない」
「ああ……そうだよ。自分が勉強をしたって、それこそもっと才能を持った
自分だって勉強をしていないわけじゃない。そこそこ……真面目にやっている……。
「でも勉強はね、あなたを自由にする」
「……自由」
ありふれた言葉が、やたらと耳に残った。
「勉強をしたらいい大学に行けて、いい仕事に就けてお金が手に入る……、なんてそんな小さな話じゃないわ。
勉強をして、知識を得て初めて、価値や楽しさの幅が広がる。つまりは、世界に対する解像度が上がる。
知らなければ、なにも感じることはできない。
知っているから、面白いと思える。なら、知っていることが増えたら?
文学の楽しさや、科学の素晴らしさや、歴史の壮大さ……そんな大げさなものだけじゃなくて、日頃見ているのに気づけなかったことに目が留まるだけで、人生は豊かになる。
勉強で知っていることが増えれば、世界は変わるのよ。
そうやって色んなことを知り、自分なりに考えて、ついに本当にやりたいことを見つけ、実現できることが、真の自由だとは思わない?」
もっと広く捉えましょうか、と月森の話はさらに広がっていく。
「すべての勉強は学問に通じている。
学問とはなにか、それは真理の探究よ。
真理の探究は、人間の本能。知りたい、理解したいという、欲求。
だって、本当なら神話と宗教があればそれでよかったはずなの。
人間は神から生まれたし、地球は平面だった──そう信じても人は生きていけた。
でもそれを
そんな知の追求者たちは、『わかる』『できる』ことばかり積み重ねたのか?
答えはもちろん、否よ。
進化論は、地動説は、『わからない』『できない』に耐え、誰から否定されても己を信じて学び続けた人たちによって確立された──そして今がある。
世の常識さえ覆してしまえる学びって、とてつもなく自由だって思わない?」
まるで自分が別世界にやってきたように錯覚して、
今自分がいるのは教室……だったはずだ。
それを確かめたくなるくらいに、今いる場所がわからなくなっていた。
夜の教室。いやそれがそもそも非常識だ。
窓の外の暗闇は、夜空に、つまりは宇宙に、つながっている。
「もちろん、誰もが専門的な学問をする必要はないわ。でも
だから、と
「真嶋君が『できない』を続ける勇気を持って勉強すれば、どこへだって羽ばたける。たとえ東大だろうが合格できる。別に東大に行くことが偉いわけじゃないけれど、東大を目指すことで学ぶ気になるなら、目標にする価値はあるわ」
夜の教室に風が吹いた。
体が浮き上がって、正太は夜の大空に飛び立つ──そんな妄想を慌てて打ち消した。
危うく、自分がなんでもできそうな気がしてしまった。
そんなことは、絶対にありえないのに。
気づくと自分は前のめりになっていた。落ち着け。生存バイアスに
正太の態度を見た月森が、どこか悲しそうな目をする。だけど意を決したように唇を
「もし真嶋君が行きたいなら、私はあなたを東大まで導ける」
背筋がぞっとするくらいに真剣な表情だった。
「今から現役合格を目指すなら、最短距離での正しい努力が要る。私ならそれに必要な受験に関する知識を提供できると思うわ」
「でも凡人の俺には……、絶対に無理だ」
そこで勘違いしないからこそ、自分は地に足のついた成功を手に入れられるのだ。
「……ねえ、そろそろ一%くらいは行ける気がしてこないもの?」
「ない。絶対に、無理だ」
ちょっと
「
「えっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!?」
「本当に反応しないでくれる? それで心変わりされたら私の熱い語りが無駄だったみたいじゃない」
氷のように冷たい目で
「……というかさ。なんでそんなに、俺が東大に受かるって話にこだわるんだ? 必要な知識を提供までしてくれるって、おかしいだろ」
「それは……」
目を見開いた月森は、一度開けた口を、なにかを飲み込むようにして閉じる。
「月森?」
「……勉強の可能性を否定されたくなくて」
「勉強の……可能性?」
「確かに、この世の中に格差はあるわ。東京に生まれただけでもアドバンテージがある。他にも親がお金持ちだとか、たくさんの有利不利は存在する。でもそんな格差をゼロにできる可能性を秘めているのが、勉強なの。勉強だけは、誰にとっても平等だから」
勉強は、平等。
それは月森が信じるものなのだろう。
「あともう一つは……」言いかけた月森が首を振る。「いえ、やっぱりこれはいいわ」
「教えてくれよ、もったいぶらずに」
「……恥ずかしいことだし」
月森がうつむいてもじもじとし始める。
「夜の秘密を共有した仲だろ」
言いながら、ちょっと待てと同時に思う。
踏み込みすぎじゃないか? 自分はただ月森を否定しに来たんだろ?
迷っているうちに、恐る恐るといった様子で月森が口を開く。
「ここで、勉強できるでしょ。……真嶋君と」
月森が差す『ここ』とは、夜の、二人きりの教室だろう。
はっ、と
「つまり、俺のことが好きっていう……」
「まさかそんなことはありえないわよね。真嶋君、面白いギャグね」
夜弁慶が強すぎたあああああ! 今のは痛い、痛すぎる。分不相応にもほどがあるだろ。落ち着け。夜は人を狂わせすぎる。
「実は医者から提案されている病気を治す方法の中で、まだ試せていないものがあって。夜を充実させるって方法で……」
その未練を解消できれば、つまり夜に満足できれば、もしくは学校生活に納得がいけば、夜に普通に眠り、昼間の学校で起きられるようになる……かもしれない。
「……夜に学校で誰かと一緒にいれば、きっかけに出会えるかもしれない。だから一緒に、たまに夜に遊んでほしい……。遊ばなくても、話ができるだけでも……。つまりは、わかりやすく言うと」
うつむく月森は、指をいじりながらぼそぼそつぶやく。
「……友だちになってほしい、ってこと」
なんか、それは、
「めちゃくちゃ
「
「がっ!? 昼間はないぞ!? でも……どうしても夜は一人モードになるから……!」
なにが偉そうに可愛い、だ。一人でティックトックの可愛い女の子を見ている気分で独り言を吐き散らかしてしまった。
しかし納得がいった。
月森が夜の教室で勉強を教えることは、夜の不眠症の治療につながる。また教えてもらう側としては学年一の天才の指導を受けられる。なるほどWin-Winの関係だ。
「まあ、俺が東大を目指すことはないんだけど」
あらためて発言すると、
……むずがゆさが込み上げてきた。
この判断は自分らしくない。
でもいいわけするならば、決して考え方では
「ただ……成績が上がることは悪いことじゃないよな」
「……え?」
そう、学年一位に教えてもらえることは、自分にとって大きなメリットだ。
公立大学ではなく、レベルが一つ上の県立大学に行ける目が見えてくるかもしれない。
それは昼を真面目に生きる自分にとっても、よいことである。
「もしよければ、俺に『本気の勉強』の仕方を教えてもらえないかな? 俺も勉強はちゃんとするから」
月森が表情を失う。なにか間違ったか、不安になった次の瞬間。
ぱっと華やいだ笑顔は、まるで夜にだけ咲く月下美人の花だ。
「い……いいの!?」身を乗り出した月森が、勢いあまって教卓を倒しそうになる。「絶対にすごくいい成績を取れるようにしてあげるから!」
「そ、そんなに気負われても……。俺なんてそれこそ、学校の定期テストも大したことないし……。英語の小テストですら、満点を取ったことがない男だから……」
「ちょうどいいわね」
月森がぱちんと指を鳴らしてから、
「一度、魔法をかけてみせるわ。明日の英語の小テストで、私は
「え……いやいや。いくら月森でも俺の点数はいじれないだろ。恥ずかしい話、これまで一番よくて十八点だから……。ほら、見出し語じゃないのあるだろ?」
英語の授業では毎回必ず英単語帳を元にした小テストが実施される。テスト範囲は決まっているのだが、毎回必ず二つほど『見出し語ではないもの』、つまり例文等に使われているマニアックな語も出されるので、満点はなかなか取れないのだ。
「その二単語は私が予想してあげる。それなら真嶋君も覚えられるでしょ?」
英単語帳を開いた月森は、今回のテスト範囲を確認して二つの単語を指差す。
「『archaeologist』と『compilation』。この二つね」
「いや、当てずっぽうじゃなかなか……」
「必ず当たる。絶対。だから真嶋君も、本気でやって」
鋭い眼光に
もしかして自分は……危うい契約をしてしまったのではないか。
「……あの、教えてもらっておいてなんだけど。いわゆる、他の普通のところも毎回完璧ってわけじゃなくて、それで満点にならない場合は……」
「そこは死ぬ気で完璧にしてね? 普通のところを間違えたら、怒るわよ?」
バリバリのスパルタだった。ただただ怖い。
「アドバイスをすると、英単語は時間をかけて書いてるヒマがあったら何度も見る。一単語一秒でどんどん先にいって、その範囲を何周も何周もやる方法がオススメよ。反復回数がすべてだから。そして最後は……気合いよ」
「まさかの精神論……?」
「絶対全部覚えるって誓う。覚悟する。約束を破ると、親友が処刑されてしまうメロスの気持ちで。オーケー?」
明日の英語小テストで満点を取ると誓わされて、
「──帰り際になんだけど、一つだけいい?」
聞き漏らしたことがあった。
「なんで夜の教室を使っても大丈夫なんだっけ?」
「じゃあ、明日の夜も来たら教える。もちろん、満点を取ってね」
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