第71話 大惨事になりそうな未来


 それもこれもマリアンヌと、フランのお父様のおかげである。


 そして俺は二人に感謝しながら鰹節を削り器で削っていく。


 正直いって前世でも鰹節を削るということなど無かったので良く見る綺麗な鰹節とはいかず不恰好ではあるものの香りたつ匂いはまさに鰹節のそれである。


 この鰹節独特の香り……。 うんこの香りだっ!! ……間違えた。 うん、この香りだっ!!


 と、茶番はさておき匂いも完璧に鰹節であり、俺は思わず泣いてしまいそうになるのをグッと堪える。


 でも、これでやっと本格的な日本食を作ることができるのだ。


 そう思うと涙のひとつやふたつくらい出そうにもなるだろう。


 そして数分間感動に浸った後、俺は削った鰹節を使って天ぷら用のつゆを作り始める。


 材料はいたってシンプルに醤油、味醂、鰹節でとった出汁である。


 そして、天ぷら用のつゆが出来上がると、厨房には懐かしい香りで満たされていた。


 目を瞑ればそれこそここが異世界である事を忘れてしまいそうになる程である。


 そして小皿によそい一口味見をしてみるとまさに天ぷら用のつゆのそれである。


 うどんも作るつもりであるので早く食べたくて仕方がないのに自分で作らなければ食べれないというジレンマに襲われる。


 しかしながらここで手を抜いて天ぷらもどきになったりうどんが生煮えだったりしたらそれこそショックでどうにかなってしまいそうなのではやる気持を抑えながら集中してひとつ一つの作業をこなしていく。


「あの、このタネ……水を入れすぎのような気がするんですけど?」


 そしてそんな俺の補佐としてキースの妹であるメアリーをつけているのだが、他の奴隷達と違って料理ができる分天ぷらの衣用に作ったタネが水を入れすぎではないのかと指摘してくれる。


 ここだけの話、他の女性陣に補佐してもらったら厨房が大惨事になりそうな未来が見えるというのは墓場まで持っていくつもりである。


 そして、この世界でもイギリスのフィッシュ&チップスのような魚のフライ料理はあるので、メアリーは俺がそれを作ろうとしているのだと思っているようである。


 ちなみにメアリーはマリアンヌの側仕えとしてウェストガフ家が雇っているのだが、釣りの時は俺たちから五メートルほど離れて見守ってくれているのを見て『それが普通の女の子の反応だよなぁ』と思った事はマリアンヌには秘密である。


「うん、これは普段食べている魚のフライではなくて天ぷらという料理だからこれで良いんだ。 水の分量が違うだけで衣の食感も魚の味も全くの別物になるから食べる時はその違いも楽しんでみたらいいよ」

「はえー……なるほどです」


 そしてメアリーは『ふむふむ』と言いながらメモをとる。

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