第72話 鋼の意志で我慢
そうこうしている間に寸胴に入れた水が沸き始めたのでうどんを投入する。
うどんに関してはクヴィスト家に着く前日から作っておいて布に包んで寝かしていた生地を俺が鰹節を使ってつゆを作っている間に伸ばしてメアリーに小指よりも少し細い間隔で切ってもらっていたものを沸き始めたお湯の中へと投入する。
後は約十五分ほど茹でて冷ました水でさらすだけなので後は砂時計と魔術で作った氷水、そしてザルを渡しておく。
そして俺はその間にマリアンヌが釣ってくれてベラに天ぷら用のタネをつけてごま油で揚げていく。
ちなみにベラなのだが三枚おろしを尻尾を残した状態で切り、尻尾は切り落とさずに背骨を切り落とし、そして中骨を切り落としてそのまま腹骨も切って取り除いたものである。
それを、尻尾についた二枚の身がくっつかないように開いた状態で揚げ始めると魚が揚げられた匂いと胡麻油の匂いが香ってきて食欲を刺激してくるではないか。
でもここは鋼の意志で我慢である。
そして、ついでに野菜にかき揚げも揚げていき、揚がっていくベラと野菜とかき揚げを見て俺は何度目かになる日本を感じて懐かしく思う。
「で、できた……っ!!」
揚げ続ける事数十分、ついに全てを揚げ終え、うどんも既に茹でおえており、人数分に分けてある状態で後は食卓に並べて食べるだけとなった。
あぁ、やっとだ。 やっと食べることができる。
どれだけつまみ食いしてやろうかと思った事か。
つまみ食いをしてしまうと最初の一口の感動が薄れてしまうので耐えに耐え抜いたので、我慢した分感動もひとしおだろう。
そして天ぷらとかき揚げ、ザルうどんを人数分を配膳し終えたのを確認して俺は席に着く。
ちなみに晩御飯の席にはフランの両親も揃っており、天ぷらやかき揚げ、ザルうどんを物珍しそうに眺めていおり、早く食べたそうにソワソワしている姿が見える。
「では、全員分揃ったのみたいなので食べましょうか。 天ぷらもかき揚げもうどんも全部この黒いスープにつけて食べてください。 天ぷらに関しては塩も美味しいですので、各々自分好みの食べ方で食べてください。 また、お好みで刻んだネギや胡麻、おろし生姜や一味を入れても美味しいですよ。 それでは、いただきます」
そして俺がそう説明して、フランの父親であるダニエルさんが食べ始めたのを見届けてから俺たちも食べ始める。
まず食べるは当然ベラの天ぷらからだ。
ベラの天ぷらを箸でつまみ、つゆにつけて食べる。
すると、口に入れた瞬間『サクッ』という音とともにベラの持つ旨味が鰹節の風味と共に一気に口の中に広がっていき、そして香りとなって鼻から抜け出していく。
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