第61話 あぁ、これぞ故郷の味
◆
あれから二年が経ち十歳となった俺のスローライフ計画もだいぶ現実味を帯びて来たように思える。
というのもチーズとヨーグルトの売り上げと、今年から味噌、醤油、みりん、日本酒の販売を始め、それが意外と好調であるという事である。
その他にもマリアンヌのおかげで今現在鰹節も製作中だったりする。
ちなみに味噌と醤油、みりんを流行らすために、事前に領地の飲食店店主へ試食会へ招待しており、そこでこれら調味料を使った料理を振る舞い、帰りにそれらレシピと調味料を一人一種一キロ程手土産で渡したのが功をそうしたようである。
その試食会で振る舞った料理は魚介と昆布ベースのうどんから味噌汁、鳥の照り焼きからバターと醤油ベースのパスタ、焼き魚に醤油と大根おろしや椎茸に醤油を垂らして焼いた物、炊き込みご飯など、取り敢えず奇を衒わず王道と呼べるようなものを揃えたというのも好印象だったようである。
ちなみに今現在では照り焼きチキンがここタリム領で大ブームになっていたりするのだから嬉しい誤算でもある。
ちなみに昆布とワカメ、そして魚介類などはフランの領地が海に面しており格安で流してもらっている。
その見返りに鰹節の製作の依頼と、こちらの製作した調味料を格安で流している。
そして、そのお陰もあって俺は晴れてフランの領地で生の魚を食べることが出来るというわけで、今その生の魚、刺身が俺の目の前にあるのだ。
あぁ、何年ぶりだろうか。
この赤と白にピンク、まるで宝石のような輝きを放っている、目の前の刺身を俺は五分ほど眺めた後、鯛っぽい身を一つ箸で摘み、醤油をつけて口へと放り込む。
すると口の中でねっとりとした生魚特有の食感と旨味、油の甘さが口いっぱいに広がっていき、そして醤油と魚の香りが鼻から抜けていく。
あぁ、これぞ故郷の味。
味噌汁や卵かけご飯の時にも味わった感動なのだが、やはり刺身ともなると別格である。
そして次はワサビの代わりに西洋ワサビを添えて食べる。
色こそ白いのだが、やはい刺身にワサビは最高の組み合わせであると再確認する。
「ご、ご主人様……生の魚なんて食べても大丈夫なのでしょうか?」
「私も少し心配だわ。 ご主人様の事ですから大丈夫だとは思いますけれども、それでも生の魚ですもの」
そんな俺をフレイムとマリアンヌが心配そうに話しかけてくる。
「川魚の生食はヤバいけど、海の魚は比較的大丈夫なんだ。 と言っても猛毒を持つ魚も痛みやすい魚もいるから必ずしも全ての海の魚が生で大丈夫というわけでは無いんだけれどね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます