第48話 彼女本来の姿
そう言いながらマリアンヌは昨日とは違い静かに泣き始めると、何度目か分からない感謝の言葉を口にする。
そんな彼女を慰めながら、アイマスクを取って数分間ほどマリアンヌを観察してみたのだが問題が無さそうなのでカーテンに手をかける。
「じゃあ、もう少し開けて行くね。 眩し過ぎたり何か違和感を感じたら一度閉めるからその時は我慢せずちゃんと教えて欲しい。 それが原因でせっかく治った目がまた悪くなったら二度手間だからね」
「わ、わかりましたっ!」
そして、何か違和感を感じた場合は痩せ我慢などせず直ぐに伝えて欲しいと言うと、マリアンヌは了承してくれ『ふんすっ』と意気込みもバッチリである。
これならば安心だろうと、俺は手にかけたカーテンをゆっくりと開き始める。
そして、数十分かけて徐々にカーテンを開いていき、ついに全てのカーテンを全開にする。
それまでにマリアンヌから目の異常は告げられていないので大丈夫だと判断して外出の許可を出す。
「良かったですね、マリアンヌさん」
「うん、そうだね。 でもそれと同じくらいフレイムも治った時は嬉しかったんだよ?」
そして俺の話を聞き終える前にマリアンヌは『今日は庭までなら外出しても良い』という言葉を耳にした瞬間、まるで子供のように顔がぱっとほころぶと庭へと裸足のまますっ飛んで行った。
その姿を見つけた使用人がマリアンヌを「せめて靴だけでも履いてくださいっ」と追いかけ、真っ赤な顔で素足をタオルで拭いてから靴へと履き替えている光景を眺めているとフレイムも余程心配していたのかその光景を見て『良かった』と言ってくれる。
うん、本当に良かった。
因みにマリアンヌは基本的にこの一週間ほどは寝たきりであった為、今までは裸足でベッドの上にいたのだが、目が見えて外にも出れるという嬉しさでマリアンヌ本人はすっかりその事を忘れてしまっていたようである。
因みにエルフとのクォーターの寿命は基本的に二百年から三百年と言われており、精神年齢も同じくらいのスピードで緩やかに成長しているのであれば、マリアンヌは今までずっと子供らしさを封印して大人びた振舞をして来た可能性もあると俺は考えている。
その為今外で駆け回っている元気な姿こそがマリアンヌ本来の姿なのかもしれない。
「マリアンヌも呼んでいる事だし、僕たちもそろそろ外へ行こうか」
「そうですね、ご主人様」
マリアンヌは出が出の為家名を名乗ることはこれからは許されず、王国の元王妃とは別人としてこれから生きて行かなければならないのだが、そのお陰で彼女本来の姿でこれから生きて行ければ良いなと俺は思うのであった。
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