第46話 治っている気がするのですが
そんな事を考えながら俺はマリアンヌへとスキル【回復】を今日も行使し、それが終わると一度退室してフレイムにマリアンヌの身体を拭いてもらう。
マリアンヌの場合、特に首から顎、そして胸に渡って変形した形で皮膚が自然治癒し始めているせいで胸から上を動かそうとしても皮膚は引っ張られてしまい動かすことが出来ず、基本的には寝たきりの彼女の為昼間は魔術書を持ってきて彼女の部屋で読書をするのが俺の日課になっていた。
そんな日々が一週間程続いた頃。
フレイムも何だかんだで半年近く治り始めるのに時間がかかったのだが、フレイムの場合は魔臓だけに対してマリアンヌは顔から胸にかけての皮膚に両目と、広範囲かつ皮膚と両目の三つも治さなければならない箇所がある為レベルが上がったからと言ってフレイムよりも早く治り始めるとは限らない。 などと思いながらいつものように俺の魔力が尽きるギリギリまでスキル【回復】を行使し始めたその時、マリアンヌの爛れて膿が出ている皮膚が淡い緑色に輝き始める。
「あ、温かい……」
そしてマリアンヌ自身も目は見えずとも自分の身体の変化に気付いたのか身体、特に火傷を負っている皮膚部分が熱を帯びていると言うではないか。
その淡い光は数分続いたかと思うと、光が消えた皮膚は触らずとも見ただけで卵のようにつやつやですべすべでみずみずしいのが分かる程にまで綺麗な状態に変化しているのが分かる程であり、マリアンヌは未だ目が見えない為に自らの手で少し前まで爛れ、膿んでいた箇所を恐る恐るといった感じで触って行っては綺麗に治った肌を確認していく。
「ご、ご主人様……あの、その……私の顔が……治っている気がするのですが?」
「うん、僕の目から見ても綺麗に治っていて触り心地がよさそうな綺麗な肌になっているのが見えるよ」
そしてマリアンヌは縋るような声音で俺へ聞いて来るのでちゃんと皮膚は治っている旨を伝えると「ご主人様、ありがとうございますっ……ありがとうございますっ」と、何度も何度も泣きながら俺へと抱きつき、感謝の言葉を口にするので俺は返事の代わりに彼女の頭を優しく撫でてあげていると、疲れたのかマリアンヌは俺に抱きついたまま眠ってしまったではないか。
マリアンヌは出会った当初こそ気丈に振舞い、この運命を受け入れていたような雰囲気を醸し出していたのだが、やはりというかただの強がりであり、自分のスキルは呪われているのだからこんな人生も仕方がないと、自分に言い聞かせて半ば自己暗示に近い方法で強引に納得しなければ自分を保つ事ができなかったのでろう。
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