第40話 悪魔のようなスキル

「容姿や年齢など僕はあまり気にしませんし、あなたの人となりは先程僕がこの部屋に訪れた時に火傷の後遺症で変形した皮膚などで身体が傷むでしょうにわざわざ起き上がったり、見られたくない上に交渉材料としては不利になる可能性もあるにもかかわらず素顔を見せて下さったその行動からある程度把握させていただきました。 きっとあなたはどこまでも真っ直ぐなお人なのでしょう」


 そして俺はここで一呼吸入れて本題へと入る。

 

 オークスからは事前にこの元王妃であるマリアンヌのスキルは水系統魔術全般の威力が上がる(とこの世界では思われている)【液体使い】の持ち主である事はわかっているのだが、そのスキルとは別にマリアンヌが現国王との婚姻関係を続けられなくなった最大の原因の理由があるはずである。


 そして俺の推理ではほぼ間違いなくあのスキルであることも目星はついているのだが、それとは別に確認もせずに人一人の人生を奴隷として契約するのはまた別の話である。


 流石にそんな良い加減な対応は相手に失礼だろう。


「しかしながらマリアンヌさんは僕に一つだけ隠し事をしているのではないでしょうか? そう、例えば表ではシングルスキルという事になっておりますが、実はダブルスキルであると僕は考察しております。 よければマリアンヌさん自身の口から教えてもらえないでしょうか?」


 そして俺は真剣な声音で彼女に問う。 できればあなたの口で教えてほしいと。


 マリアンヌさんは俺の問いに一瞬驚いたような表情をした後、覚悟を決めたのか誤魔化せないと悟ったのかはわからないのだが、隠していたスキルについて話はじめる。


「あなた……本当に六歳なのかしら? いや、この際どうでも良いわね。 そして、今まで一つだけ隠し事をしていた事を謝罪します。 私はあなたのいう通りもう一つスキルを持っているのです。 それはスキル【黴菌(カビ・細菌・ウイルス)鑑定】というものでございます。 カビは分かるのですがこの細菌やウイルスというものがどういうものかは分かりません。 ただ人が病に陥る時、その前に決まって同じ細菌やウイルスにその人の身体が侵されており、さらにその侵されている細菌やウイルスによって病気の内容まで分るところまではわかっていますが、所詮はそれまでのスキルであり、病に罹る事がわかっていたとしても、その病を治すことも発症を止めることもできない悪魔のようなスキルでございます。 ですから今の私の置かれている状況も納得できますもの。 だって、こんなスキル自分ですらも気持ちが悪いと思ってしまうのですから」

「味噌、醤油、日本酒にみりんっ! 後納豆っ!! マリアンヌさんっ!! オークスさんっ!! 僕っ、契約しますっ!! いえ、契約させてくださいっ!! 今すぐにっ!! さぁっ!!」

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