第23話 可愛らしさがそこにはあった

「うん、それでは二人で庭でも散策してみてはどうだね? 外はいい天気だし、今は丁度様々な花々も咲いているだろうからきっとフランちゃんも喜ぶんじゃ無いかな?」


 さて、これからどうやってフランを可愛がって、子供特有の可愛らしい反応を見てみようかと思っているとお父様から俺とフラン、二人で外へ出て散策でもしてはどうかと提案してくれるではないか。


 流石お父様。 これで俺は客間にいるよりもさらにフランを愛でる事ができるというものである。


 やっぱり初めてきた人の家の部屋というのは、それがたとえ客間であったとしてもどうしても緊張して身体が強張ってしまうものである。


 それよりかは外に出て開放的な環境の方がよりフランの子供らしさを見せてくれるはずだ。


「はいっ! 分かりましたっ!!」


 そして俺はそんな最高の提案をしてくれたお父様へ『ナイスアシスト』と視線を送る。


 本当、よく出来た父親である。


 しかしながら俺がここまで子供好きだったとは。


 自分のことながらその事に初めて気づき、前世では子供に携わる仕事に就けていたのならばもしかしたら、あんな死に方はしなかったのでは? と、そんなたらればを思ってします。


 家族や知人には悪いことをしたと未だに後悔しているので今世では今の家族や周囲の人達へそんな気持ちにだけはさせてなるものかと今一度俺は強く思う。


「それじゃぁフラン、一緒に外へ行きませんか? 先ほどお父様も言っておりましたが今の時期は庭の花々が咲いておりまして、きっとフランも喜んでもらえると思います」

「は、はい。 わ、わたくしを案内してくださいましっ!」


 そして俺は、いきなり呼び捨てはどうなのか? とは思うものの相手は大人ではなくて子供なのでむしろ呼び捨ての方が一気にフランと仲良くなれるだろうとあえて呼び捨てで、片膝をつき手を差し伸べる形でフランを誘うと、フランはただでさえ真っ赤な顔をさらに真っ赤にさせながら俺の手を取ってくれるではないか。


 必死に取り繕うとするも顔が真っ赤になっていたり、二本のドリル(髪型)がギュルギュルと回転してしまっている(ように見える)その姿は、まるで興味ないふりをしているのに尻尾はブンブンと振っている犬を見ているような可愛らしさがそこにはあった。


「ご主人様とフラン様はお似合いですねぇ、大旦那様」

「今までも息子の将来はどんな傑物になるのかと楽しくもあった分怖くもあったのだが、私は息子の将来が別の意味で怖くなってきたよ。 将来夜道で刺されるような人にならなければ良いのだが」

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