第16話 六歳





 そんなこんなで、フレイムの容態が良くなった後も俺は毎日欠かさず自分の魔力が尽きるまでスキル【回復】を行使し続けるという日々を続けた。


 おそらく今の俺はスキル【回復】のレベルが一つ上がった状態ではあるのだろう。


 だからこそフレイムの容態は現状維持から魔蔵の再生、そして体力の回復をしたと考えて間違いないと思っている。


 しかしながらフレイムが未だに魔術をうまく行使できない原因は俺のスキル【回復】のレベルがフレイムの魔蔵を正常な状態へと治せるレベルまで達していないからなのだろう。


 そんな一縷の望みを抱きながらも平穏な日常を暮らし三年の歳月が経った。


 俺も六歳となり、魔術も宮廷魔術騎士団に合格できるレベルであるとお母様からお墨付きである。


 因みにお母様は昔ヒーラーとして名を馳せており、その美しい容姿と相まって帝国の聖女として噂が広まる程凄かったそうである。


 確かに凄いとは思うが実の父親の惚気自慢は、できれば聞きたくないものである。


 しかしながらお父様が酔っ払った時にお母様の事を実の息子達に自慢し出すたびにお母様も「子供の前で恥ずかしいからやめてくださいっ」と言う割には満更でもなさそう、というか嬉しさを隠し切れてないので本人が喜んでいるのならば俺がとやかく言う必要もないだろう。


 多少ウザくとも、いくつになっても両親の仲が良いのは良いことである。


 そして今日も俺はお母様と魔術の勉強と実技、メイドの実技を全てマスターしたフレイムはセバスとの稽古を終え、俺の部屋でいつも通りフレイムをマッサージしてやりながらスキル【回復】を行使していると、急に失っていく魔力量が一気に増えた事が分かった。


「あっ、ご、ご主人様っ!? 今日は凄い、激しいっ!!」


 それはフレイムも同じなのかいつものスキル【回復】とは違うことを感じているようなのだが、その声はどうにかならないのか? と思ってしまう。


 声だけ聞けばそういう行為を毎日しており、しかも現在進行形でそう言う事をしているとしか思えないではないか。


 しかしながらフレイム曰く身体が変化しているような感覚らしく、嫌な感覚ではないとの事。


 それを聞いた俺は今日も正常に動ける程度に魔力をギリギリまで使い果たしてスキルの行使を終えた後、フレイムに低レベルの魔術を扱うように指示を出す。


「で、でも私……蝋燭の火くらいしか出せないですよ?」

「良いから、一度窓を開けて空に向かって炎属性の低級魔術【火球】を放ってみて?」

「わ、わかりました。 そこまでご主人様が言うのであればきっと何かがあるのでしょう。 ですが、蝋燭の火程度の火球でも私の事は嫌いにならないでくださいね?」

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