第4話 二つのスキル
◆
そんなこんなで緊張しつつも興奮しすぎたり、気になり過ぎて寝れないという事も無くその日はやって来た。
天気は雲一つない晴天。 まるで俺の門出を祝ってくれているようにすら思う。
「頑張ってね、ローレンス。 私たちは部屋の外で見守っているからね?」
「どんな結果になろうともウェストガフ家として胸を張って戻ってこい」
「どんなスキルだろうと俺にとっては自慢の弟だ。 それを忘れるな」
そして街にあるゴシック調の教会に着くや否や俺の為に心配してくれている家族達に、本当に良い家族に恵まれたものだと思うのだが、大衆の面前でそれをされると少し恥ずかしいので、できれば行の馬車の中でやってもらいたかった。
そんなこんなで家族そろって教会に行くと、女性の神官に今日来た内容を説明して別室へと案内される。
部屋は水晶が置かれた腰位の高さの細長い台以外は何も無く、壁も床も白一色であるのだが、逆にそれが非日常的な雰囲気を醸し出している。
「この水晶に手をかざしてください。 数秒すればスキルが浮かび上がりますので」
「はいっ! わかりましたっ!」
見よ、この堂に入ったショタ力を。 どっからどう見ても活発で愛想のいいショタであろう。
そんな、元気溌剌といった俺を見て神官さんも微笑みを返してくれる。
できる事なら子供の身分を最大限に利用して神官さんの胸に飛び込みたいという欲求を抑え、俺は言われた通りに水晶へ手をかざしながら、俺は一つの仮説を立てる。
この世界の住人がスキルについてそこまで詳しくないのは主にこのスキルの儀が大きいのではないかと思っている。
というのもゲームにはステータスを常に確認できる為今の自分のスキルを確認する事が出来るのだが、それはゲームだからこそ出来る話であり、実際にスキルを確認する為にはこうして教会まで行き水晶に手をかざさなければ自分のスキルを確認できないのである。
これはハッキリ言って面倒臭い。
また、それと同時にスキルは不変のものという概念も拍車をかけ、一度スキルの儀をした後に再度お金を払ってまで(三歳以上は有料)自分のスキルを確認する者もいないだろうし、スキルの儀は子供のする物と考えている人も多く、大人になってからスキルの儀を行う者はまずいない。
「う、浮かび上がりました…………で、ですがこれは……」
そこまで考えた所でどうやら俺のスキルが浮かび上がったみたいである。
はやる気持ちを抑えながら浮かび上がったスキルを確認すると、そこには【奴隷使役】【回復】の二つのスキルが浮かび上がっているではないか。
ダブルスキルか……かなり珍しいのでもてはやされては困るのだがスキル自体は兄上と比べても明らかに見劣りするので何とか当初の目標であった兄の陰に隠れた地味な弟というポジションにはいられそうで安堵する。
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