ヨヒラ
咲原 百花
これはおばあちゃんの初恋の話
私の大好きなあなたは、今誰かに恋をしていて、だけどそのことを誰にも話せないでいる。友達にも、お母さんにも。だって、あなたの恋心について話してしまったら、きっと「おかしい」って言われてしまう。あなたはそう思っている。
それは、叶わない恋だと思われてしまうからかもしれないし、他の誰か、たとえばあなたのお友達が、普通は好きにならない人を好きになってしまったからかもしれない。
どうして分かるのって?
だっておばあちゃんは、あなたがほんとうにちっちゃくて、まだ目をあけることができずに、眠ってるみたいに安らかな顔でミルクを飲んでいた時から、あなたを見ていたの。
だから、今のあなたの真ん丸な二つの目が、どこに向けられているか、何を見つめているか。それを見ていれば私には分かってしまう。
おばあちゃんも、あなたみたいに恋をしていた。
でもそれは、言葉にできるものではなくて、終ぞあの人に伝えることはできなかった。
だからこれは、誰にも言えないおばあちゃんの初恋の話。
あなたと私2人だけの、人に言えない秘密の恋の話。
大丈夫。心配しないで、お話はハッピーエンドで終わる。だっておばあちゃんはあの人とずっと一緒にいたもの。
これは、おばあちゃんがあなたよりも子供だったころの、ずっと昔の話。あなたには想像もつかないかもしれないけれど、昔は家族に捨てられてしまう子供も多かった。
ああそういえば、あの人は昔から猫が大好きだった。
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