第41話 指名手配
ルルナの活躍により、巨大ワームの討伐に成功した俺たちパーティー。
ルルナの装備する『水のリング』、『風のリング』、『土のリング』、そして、チェルシーが装備している『火のリング』。
4つの『フェイタル・リング』が揃ったことで、『光のリング』入手イベントのフラグが立つことになる。
俺たちは、巨大ワーム戦で消耗したルルナの体力回復を待って、次なる目的地《聖都ロア》へ向かう。
◆
直近で俺たちが《聖都ロア》を訪れたのは、『風のリング』を皇帝軍から取り返した後、《仲間連れ去り事件》が発生した、あの時である。
「なんか物々しい雰囲気を感じるわね……なにかあったのかしら?」
もともと厳かな雰囲気が漂う近寄りづらい街だったが、今ではそれに加えて、どこか緊迫した空気が流れているようだ。
「おや? 大聖堂に繋がる大通りが封鎖されていますよ?」
「あっ、ほんとだ! アタシたち、聖王の持つ『光のリング』を手に入れるためにココに来たのよね? これじゃあ、聖王のいる場所まで行けないじゃないのよ!」
チェルシーが不満そうに言う。
「その理由は、すぐに分かる」
「ヴェリオ様のその言い方……なんか嫌な予感がするわ……」
長く一緒に行動していると、自然と気持ちが通じてしまうものらしい。
チェルシーの予感は的中である。
聖王のいる大聖堂へ続く大通り。
封鎖されているが、通りには多くの人間たちがいる。
そして、その人間たちは皆が教会の関係者である。
つまり──
「おい! あそこに反逆者ルルナとその仲間がいるぞ!!!」
「皆の者! 反逆者ルルナの身柄を確保するのだ!!!」
「教会に仇なす反逆者ルルナ! 覚悟するがいい!」
全員が俺たちの敵である。
俺たちは急いで大通りとは逆方向へ走り出す。
「ええぇ!! ちょっと待って!? アタシたち完全に狙われてるわよ!?」
駆けながら叫ぶチェルシー。
「そりゃそうだ。俺たちは今や教会の敵だからな」
「…………」
ルルナは無言で俯く。
「ルルナとチェルシーは、聖王エリオン17世の裏の顔を知っているんだよな?」
「うん……リングの力を使って世界征服しようと企む悪い人間……しかも、裏から手を回してヴェリオ様を連れ去るような酷いヤツよ!」
「俺を誘拐したのだって、リングを奪い取るためだからな。だが、そのリング強奪計画が失敗したことで、聖王は教会を挙げて俺たちを潰すという強硬手段へ作戦を変更したんだ。今、俺たちは世界中に指名手配されてるぜ」
「潰すって……世界の救世主である、運命の導き手のルルナを!?」
「ああ。聖王の中に正しい心など存在していない。悪逆皇帝ディアギレスと同じ……自身の世界征服の障害となる者は全て滅ぼすという考えのみで動いているんだ」
「…………」
ルルナは全力で走りながら、顔を少しだけ歪めていた。
身体的な疲れからではない。
精神的な面で
でも、ルルナは一度決めたことは、やり遂げる。
聖王を倒すと決めた以上、ルルナはやってくれるはずだ。
「……それで、現在の状況は理解できたんだけど、これからどうするの!? このまま徒競走を続けるのかしら!?」
「いや──」
──メインクエスト《光と闇》を受注しました──
走りながら揺れる俺の視界。
そこにシステムメッセージが表示された。
よし、無事に『光のリング』入手クエストのフラグが立った。
「あの人数を相手にするのは、さすがに……」
チェルシーが、後ろから猛烈な勢いで追ってくる集団をチラッと見て呟く。
「あいつらとは戦わない」
「でも、大聖堂へは大通りを抜けないと辿り着けないわよ!?」
「別の
「そんな道があるの!? さすがはヴェリオ様ね! この街のことは調査済みってことね!」
「いいや、俺は調査していない」
「?」
首を傾げるチェルシー。
「その
「仲間……ですか?」
無言だったルルナも、俺の言葉に口を開く。
「アタシたちに他に仲間なんて居ないわよ!? え? 居ない……わよね!?」
チェルシーは念を押すように訊ねてくる。
「居るだろ? 聖王と教会の裏側に詳しいヤツが」
「居たかしら……そんなヤツ…………うぅ~ん?」
チェルシーは唸りながら考えているようだ。
「…………あっ」
どうやらルルナは察したらしい。
「そう……ヤツだ。これからヤツのもとへ飛ぶからな! 2人とも俺から離れるなよ!!!!」
「ええええぇ!? ヤツって誰よおおおおぉ!?」
俺はチェルシーの質問には答えず、
ヤツ──『ボス・オーガイン』のいる《荒くれの町ラガール》へ向けて。
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