好きだった人

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 その人の事、好きだった。


 ひとめ見た時からカッコいいなって思ってた。


 陸上部部の活動で一生懸命走る姿をみて、きゅんとしてしまった。


 ゴールだけをひたすらみてまっすぐに走り込む姿が、脳裏を離れなかった。


 告白しようって思ったわけじゃない。


 具体的に好き合ったらどうとか、そういう事を考えていたわけじゃない。


 ただ、漠然とその人の在り方が好きで、好意を抱いていた。


 だから、その熱が数日後に覚めてしまった時、そんなに傷つかなかった。


「陸上部? そんなのモテるためにやってるんだし」


 あの人が友達にそう言っているのを、ふいに聞いてしまった。


 その言葉で恋の熱が冷めてしまった。


 ああ、初恋って叶わないって聞くけど、こんなに早く叶わなくなるとは普通思わない。


「一生懸命やってるのなんて演技だよ演技。そうしたら女子たちはきゃーきゃー言ってくれる。ほら、俺イケメンだし」


 ははははは、と男達が笑うのを背中に聞きながらその場を去る。


 世の中には、色々な愛のカタチがある。


 その分だけ失恋の形もあるんだろうけれど。


 こんなあっけない失恋もあったんだなと、どこか冷静に考えていた。


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好きだった人 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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