第13話 スタンピード⑤
アレク達の戦いは苛烈を極めていた。
「ハッ!!」
アレクが接近し、ロングソードで足を狙うが鎧みたいな固い鱗に傷をつけるだけにとどまる。
「おいおい固すぎねぇか⁉」
「鱗の間を狙え!!」
次々に剣や槍、魔法に弓といった多種多様な武器により攻撃されていく。それに苛立った黒竜は翼を広げ、飛び立とうとした。
「空に逃げられるぞ!翼を攻撃しろ!!」
彼らは翼に攻撃をし始める。が、
「ガァァァ!!!」
突然黒竜は暴れだす。
そして―――――
ビュン―—
「まずいッ!!すぐに…」
ズガァァァァァァン!!!!!!!!!!!
黒竜の木の幹よりも太い尻尾を鞭のようにしならせて前方に叩きつけた。
「うおっ!」「ガッ…」「ふっ…!」「クッ…!!」
音速を超えた尻尾の攻撃は衝撃波を生み出し、長さ二百メートルもの跡を作った。
「無事か⁉」
「ちょいと破片が当たっただけだ!」
幸いにも全員回避行動をとっていたので直接的な傷は負っていない。
「各自さっき以上に注意しろ!引き続き翼優先だ!!」
一番に仕掛けるアレク。
それを見た黒竜は闇の魔法で多数の漆黒の槍を作り出して飛ばす。
「シッ!!」
それを見切り、最小限の動きで槍の隙間を動いて爆炎とともに黒竜に近づく。
さらに別の方向からドリスが接近し攻撃しようとするが、黒竜はそのままアレクに向かって突進する。
十トンを優に超える黒竜の突進をまともに受けたアレクは吹き飛ばされる―――
と思うかもしれないが、斜め上に跳躍しながらすれ違いざまに首を切る。
「ゴガァァァァ!!!」
首を切られた黒竜は咆哮を上げる。
「—————かの敵を打ち抜け―氷槍』!」
咆哮によって硬直した黒竜の翼をめがけて上空から大きな氷の槍を落とす。
水平に放たれ加速しないものと違い、上空から落とされるため重力によって加速する。
その氷槍はいとも簡単に―――――――—黒竜の翼と地面を縫い付けた。
「グギャァァァァァ!!!!!」
森に絶叫が木霊する。
「今が好機だ!!」
アレクとドリスを筆頭に的確にダメージを与えていく。
これはいけると全員が思ったが、黒竜が最後のあがきを見せる。
自分の尻尾で縫い留められている翼を切り離し、後退して口を開ける。
その瞬間絶大な魔力が黒竜の口元に収束する。
「キュイィィィィィ―—————」
溜めの時間が短くもうすぐにでも放たれそうだ。
「ブレスだ!全員一か所に集まれぇぇぇぇ!!!」
まず光属性が得意な魔術師によっての『光陣結界』を三重で発動する。
そして他の者たちも無属性が得意な奴はありったけな魔力を込めた魔力障壁を。他の属性が得な者はその属性の防御魔術を発動した。
瞬間、闇属性を伴うブレスが吐かれる。
まず二十枚の無属性の魔力障壁が次々と破られる。
「ぐぅぅぅぅ…!!」
全ての魔力障壁が破られ、他の属性の防御魔術も瞬殺され、最後の砦である『光陣結界』に到達し、凄まじい衝撃波と魔力波が襲い汗が溢れる。
「耐えろぉぉぉぉぉぉおお!!」
襲い掛かるブレスを前に時間が永遠に感じる。
パリンッ
一枚破られる。
パリンッ
二枚破られる。
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!———————————
衝撃が止まる。
「討ち取れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
全身に力を入れ、黒竜に向かって一斉に駆け出す。
ブレスの直後で動きが遅い黒竜は逃げようとするが、いつの間にか足が拘束されている。
不味いと黒竜は正面に顔を向けるが目に映ったのは、討ち取ろうとする戦士たちの顔だった。
黒竜の首が宙を舞う。
「俺たちの勝利だ!!!!!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
こうして誰一人死ぬことなくスタンピードが終息したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます