バカは死んでも治らない?治さんわ!!
赤井 水
プロローグ
俺は今、目の前で蹲っている奴をパンツ一丁にして蹴り飛ばしている。
「うぅ……ごめんなさい。だからもうやめてください」
悪いが俺もやらなきゃ標的にされるんだよ!でもこいつにしてみれば全部敵だ。
だからこそ俺はそんな事は言わないし、演じ切る。
「ギャハハ!知らねぇよ!おい!お前明日何か買ってこいよ!朝一番だぞ!遅れたり来なかったら良いな?おい?聞いてんのか?」
返事がなかったから俺は蹴人を蹴り飛ばす。
「う、わかったよ……何でも良いんだね?」
蹴人がその時、瞳に怪しい光を灯していた事なんて俺は知る由もなかった。
「あぁ、何でも良いさ!じゃーな!」
俺はそう言って帰宅した。
◇
次の日の朝一番に学校に来て、蹴人を待っていた。
時計を見ると7時、まだ誰も来やしない。
蹴人が来ない事に何か不安と嫌な予感がした。
ガラッ、とトビラが開く音がして視線を向けるとギョッとした。
そこには顔面をパンパンに腫らした蹴人が居て鬼気迫る表情をしていた。
「お、おい、蹴人大丈夫か?」
俺達は確かにヤンキーに言われてこいつをいじめていた。
しかしちゃんとルールがあった。
顔を狙わない、殴る蹴るはしても大怪我はさせない、1人のみを狙い家族を巻き込まない等かなり身勝手なルールだった。
俺はあまりの大怪我をしてる相手に地が出て無防備に近付いた、蹴人の目が暗く光ってる事にも気付かずに……
「今更……今更遅せぇんだよぉぉぉぉ」
蹴人は俺に突っ込んで来た、そして2人して教室の机を吹き飛ばしながら倒れた。
「ハッハッハッハッ……蹴人……謝んねぇぞ俺は……俺だって怖かったんだ。
身勝手だけどな……早く……逃げろ……」
蹴人は俺の腹に刺さっている包丁を見てパニックになっていた。
刺すつもりは無かったのかもしれん。
「う、うわぁぁぁぁぁ」
「ゲボっ……蹴人……何で態々包丁抜いてくんだ……よ……あぁ死ぬのって怖ぇな」
俺の記憶はここで途切れた。
◇
何故か俺の意識が戻ったと思ったら……
『こんのバッカモーン!!』
髭の長い爺さんに怒鳴られた……
『お主らは何をしたか分かっておるのか?蹴人はあのまま順調に成長して居れば将来環境問題解決までの礎を築く存在じゃったのじゃ!
それを貴様らの身勝手な行動で泡沫に期したわい……』
蹴人は確かに頭が良かった。
そうか……俺を刺したせいでアイツの道を全て閉ざしてしまったのか。
『お主らの存在や魂等わしらの世界には相応しく無い。
追放じゃ、事故であろうと一時の迷いであろうとも蹴人の運命をねじ曲げる訳にはいかん。
お主の存在を消させて貰う』
「は?じゃあ蹴人は俺を刺さなかった事になるのか?」
チッっと舌打ちをする爺さん。
『非常に不本意ながらじゃけどな?
しかし、既に有った魂を身勝手に消滅させるのはわしらでも禁忌じゃ。
そこでお主は別の世界に行ってもらう。
バカは死んでも治らんと言うからの。それが本当か確かめてやるわい。
その現地人と同じ体質にしてやるわい。
ほれ、さっさと行け』
「はぁ?ちょっと!」
その後の言葉を紡ぐ事が俺には出来なかった。
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