どうして?

@sandora1122

プロローグ

私が真に消滅したのは、比喩である。


過ぎ去った日の会話が聞こえる。


私を弔う人の声。





綺麗事が嫌いだ。


綺麗事を発する人間に、私は問うた。


ブタのヒヅメに思いを馳せたことはあるか?


分度器の心臓を理解しようとしたことはあるか?






人間とは、自分とは異なる種族の生き物について、


全くと言っていいほどに無関心、無頓着だ。


同じ『人間』という種族に対しても、


きっと本当の意味で、見向きもしない。


そのくせ、弔いのみは一丁前だ。





人が死ぬことは、決して美談ではない。


死んだ人間は死んだ人間だ。


誰を言っても、彼が変わる訳は有り得ない。






ニュース番組を見た。


「有名なあの人が自殺した。」


「どこかの家族が心中した。」


心底、どうでもいい。






誰かの死を弔い、「辛かったね」と。


反吐が出る。


死んだ人間なんかよりも、今にも死にそうな人に、


その時間を使ってあげるべきだろう。






今にも死にそうなほど辛い人。


今まで辛かった、もう死んだ人。


命の天秤が傾くは後者か?


冷静に考えれば、愚問であろう。





遠い日の記憶から、目を逸らす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る