第7話 老人と犬は雑木林を見つめる
朝早く近くの公園によく行く。ウォーキングと言えば聞こえがいいが、ただのろのろとうろうろするだけなので徘徊と称している。
その日公園に午前6時に着いた。それなりの広さのある公園で雑木林のようになっている一角もある。
いつも公園の入り口の広場で足の屈伸や前後屈のような軽い体操をする。
体操していると背後に気配を感じた。
振り返ってみると、電動カートに乗った爺さんが見えた。カートの横には小さな犬がいる。
爺さんは公園の奥の雑木林を見つめている。犬も同じ方向を向いている。
一人と一匹はじっと動かない。
爺さんは小綺麗な服装をしている。白髪も綺麗に撫でつけられている。犬も毛並みはきれいだ。
爺さんは無表情。何歳くらいだろうか。80歳くらいに見えるけれど。
僕が80歳になるのにあと18年。18年か。小学校に入って大学卒業するくらいの年月か。そう考えるとずいぶんと長い。けれど過ぎ去った時間として振り返ればあっという間だ。これからの18年はどんな長さなのだろう。
80歳になった時僕はどんなふうになっているのだろう。80歳まで生きないかもしれないけど。生きているって何なんだろう。本能的に生きようとするから生きている。生きている意味というようなことを考えたことは無い。
いろいろ経験はしてきた。だからと言って感慨はない。そういうふうな光景があったというだけのことだ。
老人と犬が雑木林を見つめている。老人には過去の自分の光景が浮かんできているのかもしれない。
なぜかそう思った。
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