カナリア船長の航海日誌
水鳥彩花
継承
5月18日
《晴れ 風もなく穏やか》
パロット船長が死んだ。
雲ひとつない空を、これほど憎んだことはない。燦々と輝く太陽が、目に沁みた。涙が溢れてくるのは、あの眩しさに焼かれたせいだ。涙が零れてしまうのは、光から逃れたくて下を向いてしまうせいだ。雨であったなら、ぼくらの涙をごまかしてくれただろうに。天気は空気を読んでくれない。
さて、パロット船長の遺言に基づき、次の船長が決まった。ぼく、カナリアである。
ぼくを選ぶとは、船長は思考まで病魔に侵されていたに違いない。しかし、彼は死に間際ぼくの手を取り、真っ直ぐ目を合わせて「カナリア」と呼んだ。誰かと間違えた訳ではなさそうだった。これは船員みなが見ている。ぼくよりみんなのほうが驚いていた。なにせぼくがジョンブリアンに拾われたのは、たったの3週間前だから。
パロット船長が何を思ってぼくを選んだのか、いまはまだわからない。けれど恩人に託されたからには、乗りこなしてみせよう。
みんなも、船も、そしてこの日誌も、今後はぼくのものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます