年末に向けての一人語り
さて、クラブ馬が出る今年のレースも残すところ
サードが出走するBCCは十一月第一週、マイチャンはその翌々週の第三週。有馬はご存じ年末の日曜日。何故か凱旋門賞馬になったエミューズと三冠馬のリドルは今年度の無理を考慮して年内は出走させないほうへ振り切っていると市古さんが言っていた。公言はしてないけどね。
せっかくなので今年メイクデビューしたクラブ馬の戦績をまとめよう。
まず七月デビューのオウカウスズミ。三冠馬血統に長距離G1馬をつけた良血馬で、その才を示すようにデビュー戦で三馬身差の完勝。札幌2歳ステークスでも危なげなく勝利し、桜花クラブ第三世代の鏑矢となった。
次にオウカアカシンジュ。九月にデビューしたアメリカからの輸入馬。どうにも晩成馬のようで異常にズブい。試しに雄田騎手を乗せたらメッチャ気に入っていたらしい、やっぱ変人だよあの人。戦績は三戦三敗、掲示板もギリギリなレース結果だ。来年以降に期待だね。
最後はオウカツキナデン。菊花賞と同じ日に初出走だった彼は父スピードエース、母リリカルエースの仔だ。つまり、リドルの弟にあたる。リドルがホープフルを勝利した後から購入問い合わせがひっきりなしに来たので対応を丸投げするためにクラブ馬にした。
ちなみに、ショート・リドルといったG1馬を産んでいるリリカルエースは今年度で肌馬を引退して繋養馬になる。ホースパークでの繋養になるので集客もすごいだろうな。
そういえば、クラブ馬にオウカ冠名が戻ってきている。理由は簡単で、冠名がある方がクラブ馬として分かりやすいのが一つ、もう一つはいい感じの名前をつけようとすると既にかこつけられた名前だったりするからである。エミューズも前に付けられていたことがあるしね。
補足だが、競走馬の命名にはルールが存在する。これに違反すると馬名申請が拒否されるんだな。
まず一つ目、過去の重賞勝ち馬と同名はNG。これはシンプルに歴史に名が残るから。
二つ目、名前は九文字まで。海外の英字だと十八文字なのでそれに合わせているのだろう。昔、十文字にしてくれと馬主会から要請されたが却下された過去がある。純粋に呼びにくくなるからだろうな。ただでさえ呼びにくい名前が増えてきたし。
三つ目は牡馬に牝を連想させる名前や、牝馬に牡を連想させる名前の禁止。紛らわしいからね。線引きは曖昧なんだけども。
四つ、宣伝・広告とみなされる名前や個人名を特定される名前は禁止。スズカセイジとかオウカボクジョウとかはダメってことだ。いわゆるステマをさせないための措置だが、人気の楽曲を意味を曲解した理由で通す人もいる。こちらも曖昧な線引きである。
最後に、過去に同名の競走馬がいた場合は五年間は同じ名前の使用を禁止。近スパンで同じ名前だとわかんなくなっちゃう。
あとは競馬用語もアウトのはずなんだが、重賞馬にバリバリの競馬用語してる馬がいるのでよくわかんない。わりとノリで決めてるような気がしないでもないな。
閑話休題。新たなオウカ冠名の彼らは完全に俺が関与しないことが明言された。なんなら会報誌にも載った。重賞を勝って当然と思われるのは後々面倒なことになるし、完全なクラブ馬として扱うことに決定している。
これはつまり、市古さんやクラブの幹部がレースローテを決めなくてはいけないということだ。だから信頼できる羅田さんや海老原のおっさんの厩舎に任せる必要があった。そのため、俺がエミューズとリドルの育成に手を出したわけだったりする。三冠馬と凱旋門賞を輩出した厩舎たちだ、クラブ馬が彼らのところに預託されてもグチャグチャ抜かす一口馬主はもう出てこないだろう。
代わりに、といってしまうと妙な感じだが、俺の個人所有馬は全て幸永調教師にお任せすることにした。羅田さんとおっさんは完全に縁切り、というわけではないが、距離が近いと思われるとアドバイスを貰えなどと抜かす輩が現れる可能性がある。俺イコール桜花クラブの構図は完全に否定する必要があるのだ。
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