「ウィナーズ競馬！　有馬記念前特番～！

　オイッス！　最近自分の子が初勝利を飾った内藤です！」

「オイッス！　その話をめっちゃ聞かされてちょっとイラついている林です！」

「オイッス！　ぶっちゃけ忙しくてそれをさっき知った鈴鹿です！」

「ちょっと！　二人ともひどいですよ！」

　俺はテレビ局での収録に参加している。有馬記念前の事前収録だ。出走予定馬へのコメントを事前に撮っておき、それを編集して有馬記念前日の土曜日に放送するらしい。多忙な俺への配慮だろう、ありがたい。

「内藤さんのことはさておき。有馬記念の人気投票、現在時点での出走表明馬と絡めて解説を鈴鹿さんにお願いします。

　内藤さんは今回の有馬記念でオススメの有力馬はいらっしゃいますか？」

「もちろん、メグロロナウドでしょう！　今回の有馬で一番ドラスティックにドラマティックなのは彼をおいて他なりません！」

「人の生き死にが絡むと日本人は熱くなりがちですからねぇ」

　妙に熱の入った発言をする内藤さんを見て苦笑する。忖度してショートと言わないあたりが内藤さんが好かれる理由なんだろう。

「ご自身の馬が出走される鈴鹿さんはいかがでしょう」

「そうですね。立場的にオウカショートが有力と言いたいところですが」

「ですが？」

「欧州馬の二頭が怖いところですね、特にシーレギオンは一度負けてますから。

　日本の高速馬場に適応出来たらごぼう抜きってのも有り得なくないです」

「なるほど、それでは一頭ずつ振り返っていきましょう。まずは人気投票一位のオウカショートからお願いします」

　林さんが手を振って映像を出すジェスチャーを出す。

「はーい、オウカショートは凱旋門賞で二着に入着したので一番人気に推されているのだと思われますが、その実、中山競馬場とは相性が悪いです」

「そうなんですか！？」

「そうなんですよ内藤さん。ショートは脚の関係で左回りが得意ですが右は少し苦手なんですね。右回りだと内に入ってコーナーを回る時に膨れるので斜行と取られかねない状況が起こりやすいんです。しかも有馬はコーナーが六回もありますから。

　実際のところは抽選会では内より外枠のほうが欲しいところですね」

「おぉ、実際の馬主さんからじゃないと聞けない情報ですね」

「馬には大なり小なり癖はありますからね。全くの無個性といえばレジェンぐらいじゃないですか？」

「グリゼルダレジェンってそうだったんですか？」

「彼女は非常に頭がいいですからね。右回り左回り、距離までも事前に走らせて教えておくと癖を消して走ってくれました。浅井騎手がレジェンに乗ってルート取りで困ったことがないのはこれが大きな要因です。

　つまり、教科書通りの強い競馬をすることが無敗に繋がった一番の理由でしょうね」

「まさかグリゼルダレジェンの裏話まで聞けるとは……。それでは二番人気メグロロナウドの解説をお願いします」

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