鈴鹿静時のオーナーブリーダー物語〜謎アプリを添えて〜

有馬を見据えて

　師走に入り、年の瀬も近くなった頃。有馬記念の人気投票が現在実施されている。

　今更だが有馬記念と宝塚記念、通称グランプリと呼ばれるこの二つのレースに出走する馬はファンたちによる人気投票で決められる。正確に言えば人気投票で上から順番に出走か否かの選択権をもらえるってだけだが。

　今年はレベルの高い馬が多かった、つまり有馬記念の人気投票も割れている。一番人気は手前味噌だがオウカショート。凱旋門の結果を受けての人気だろうな。

　二番人気はメグロロナウド、菊花では敗北したがサードが出走しないと言い切っていることとは別にもう一つの理由がある。目黒牧場の総帥である目黒さんがジャパンカップの翌日にこの世を去ったからである。あまりよい言い方ではないかもしれないが日本人はこの手の話に弱いからな、メグロロナウドに有馬を勝ってもらって黄泉地への手向けにしたいと思っている競馬ファンも多いってことだ。長く続いている牧場だからファンもかなりいるからな。

　三番人気はオウカサード、出走しないので関係ないんだがな。人気投票だから今年目立ったサードにも票が入っているのだ。ケンタッキーダービーで結果出したしね。ベルモントステークス？　うっ、頭が……。

　四番人気と五番人気はソメイヨシノとナモトダービー、去年の桜花賞馬とダービー馬だ。昨年はレジェンにやられたので今年こそはと息まいているらしい。

　六番人気はノン、ノンバイプレイヤーだ。気分屋だが陣営も扱い方がわかってきたのか有馬の出走を決めたみたいだ。強力なライバルである。

　七番人気はグルーヴブレイブ、去年のオークス馬。晩成傾向の血統で、京都大賞典ではかなり仕上がっていた。こちらも強敵だな。

　八番人気以下は団子であるし、目立った戦績の馬もいない。ちょいちょい障害馬が推されているのが笑えるが。有馬と中山大障害一日違いなのに出るわけないだろうに。

　さて、ここからが本題。海外馬の出走も決まっている。有馬記念は外国馬の優先出走があり、六頭までは楽に出走できる。今回は二頭が優先出走を使ってエントリーしている。

　一頭目はジャパンカップを見事に勝利したシーレギオン。ショートと因縁の相手だな。本来ならばジャパンカップ終了の時点で帰国する予定だったが調子がいいので有馬に挑むことにしたそうだ。ちょうどいい、凱旋門の敵を有馬で討つか。

　そして、もう一頭はイギリスのウィルさんからの刺客、ヨークシャーオークス馬のフィレモン。五歳馬だが未だに2400メートルでは負け知らずのモンスターホースだ。ジャパンカップには調整が間に合わなかったが有馬記念には完璧に仕上げて行くとワザワザウィルさんからメールをもらった。遠回しな出走恐喝である。いや出るけども。

　有力馬はこんなところか。有馬前にウィルさんとジョアンが島に来ることになってるから歓待の準備もしないといけないな。

　俺は師じゃないけども用意で走り回ることになるんだろうなぁ。