グリゼルダレジェン列伝:前編

グリゼルダレジェン(欧字名:Griselda・legen)は、日本の競走馬、繁殖牝馬。


オーストラリアの短中距離王者ゲイリーヘル産駒のラストクロップの一頭[*1]である。2039年度中央競馬賞年度代表馬、最優秀4歳牝馬および最優秀内国産馬、2040年度中央競馬賞特別賞受賞。 2040年、顕彰馬に選出。


主な勝ち鞍は2039年桜花賞、優駿牝馬(オークス)、東京優駿(日本ダービー)、ジャパンカップ、2040年宝塚記念、有馬記念など計七冠。


脚質にこだわらずに走り抜けた競走生活から連想して付けられた二つ名は「変幻自在の女帝」[*2]、幾度もの名勝負と勝利を挙げた競走生活から「伝説の無敗七冠馬」[*3]とも呼ばれる。


デビューまで


父は競走馬時代にジョージライダーSを含むGI競走三勝を挙げ、「弾丸」と称されたゲイリーヘル。母ドゥリーマムは、脚元に難があったため競走馬としてデビューできずに繁殖入りしていた[*4]。ドゥリーマムの馬主・松村正則は、かねてより望んでいたゲイリーヘルの種付け株を手に入れた。

しかし、直前につけるはずだった馬が急死したために急遽ドゥリーマムをオーストラリアに移送して種付けを行った。


2036年4月20日、北海道の鳥山牧場で、ドゥリーマムは牝駒を出産した。父の異名「弾丸」を継いで伝説的な馬になってほしいとの思いで、牝駒は出生直後より「タマ(弾丸)」と呼ばれ、幼名は「マツマサダンガン」とされた[*5]。幼駒の頃のタマは脚が長く華奢な身体付きで、一見して見栄えが悪く、それほど高い評価は受けていなかった。

しかし、2036年末、松村が交通事故により急死。牧場で繁育中だったタマの所有権が鳥山に渡る[*6]、しかし本年度で牧場を畳む予定だった鳥山は困り、どうにかして売り先を考えなくてはならなかった。これが運命の出会いである鈴鹿との始まりである。

細かい取引内容は覚えていないと両者は言うが、一目見てタマを気に入った鈴鹿は即購入し福岡の離島に存在する桜花島に設立したばかりの桜花牧場にタマを迎え入れた。

その後、七か月を桜花島で過ごし、入厩可能となった2037年10月、滋賀県栗東トレーニングセンターの海老原厩舎に入る[*7]。

競走名は欧名で戦士と伝説を合わせた「グリゼルダレジェン」で登録された。


トレーニングセンターの調教では、さまざまなコースで際立った動きを見せ、羅田に大きな期待を抱かせた。羅田と馬主の鈴鹿はクラシックを狙える馬であると感じ、桜花賞、優駿牝馬から逆算しての、余裕を持ったローテーションを企画した[*8]。羅田厩舎所属騎手であり主戦騎手を担当することになった足立はその乗り味に驚き、「騎手になってこんなに乗りやすい馬にであったことはない」と絶賛し、実際に調教で跨った者からは賞賛する言葉が相次いだという。装蹄師の入場はレジェンの優れた蹄に驚き、馬を曳く羅田厩舎の厩務員に「時代の名馬が来た」と口にした。


競走馬時代

六月、東京競馬場の新馬戦でデビュー。羅田が鈴鹿と相談しダービーを見据えて左回りを経験させようと東京競馬場が選ばれ、主戦の足立が騎乗する予定だったが当日の別レースで足立が落馬。急遽、その場にいた吉が騎乗することに。

当日は調教での動きの良さが評価されて単勝1番人気に支持、カーブ半径が短く馬の能力が発揮されやすい東京競馬場にて、最後方に付けてレースを進めて残り4ハロンでスパートを掛け他馬をごぼう抜きにし、吉が手綱を抑える余裕を見せ大差をつけて勝利した。

吉はレース後に興奮気味に「手ごたえに余裕があり、楽勝でした」とコメントした。

次走の新潟2歳ステークスも1番人気となり、騎手は骨折から復帰できてない足立の代わりに浅井に乗り替わりとなりファンからは不安視されていたが、後方追走から残り800mの標識付近で前走同様前方へ進出、大外から強襲しまたも大差勝ちをしてデビュー2連勝を記録した。


その後、羅田と鈴鹿は桜花賞までのローテーションについて、順当に牝馬三冠のローテーションを通ることを決め、目標を阪神ジュベナイルフィリーズにし、次走に叩き台としてサウジアラビアロイヤルカップに挑戦することにした。

羅田は当時周りからはアルテミスステークスではないのかと聞かれたと後に語ったが、これは六週しか間が明かないことで怪我をしないための措置だった。

サウジアラビアロイヤルカップでも前走のような4ハロンからの強襲で見事後続を突き放して一着を奪い去り、この頃からクラシックの有力馬として注目されるようになる。

続いて12月中旬の阪神ジュベナイルフィリーズではグリゼルダレジェンの持ち時計に対し、他陣営が及び腰になってしまい一時は五頭での出走になりかけたが、「ウィナーズ競馬」にて鈴鹿が挑発的な言動を地上波に載せ、それに乗せられるように有力馬が出走しレースが無事頭数が揃えられた。

肝心のレースは終生のライバルとなるレアシンジュがハナを奪い激走。大逃げを敢行するレアシンジュにグリゼルダレジェンは先行で対応、残り1ハロン時点で四馬身差をつけてリードをしたまま先着。見事に無敗でジュニアG1を手にした。

また、先行策を取った理由としてスタートで鞍上の浅井が鐙から足を踏み外したために姿勢を立て直すために全力疾走し鐙が揺れないようにしたと関係者の発言があり、グリゼルダレジェンの頭の良さが伺えた。



[*1]ラストクロップはわずか三頭で、ゲイリーヘルはこの年の夏に腸ねん転で死亡した。

[*2]海外では「ユビキタス(偏在)」と呼ばれることが多い。

[*3]日本ではこの記録を持つのは彼女だけである。

[*4]骨格成形不良で走るとすぐに転倒する症状であったが、成長と共に次第に障害はなくなっていった。

[*5]マツマサは松村正則の冠名。

[*6]厳密には購入手続きをしていなかったため購入権が宙に浮いた状態である。

[*7]本来は羅田厩舎の予定であったが、手違いにより厩舎に空きがなかったため臨時で海老原厩舎の馬房に入厩した。

[*8]羅田は牝馬三冠を狙うつもりのローテーションだったが、鈴鹿は選馬眼に優れておりグリゼルダレジェンは伝説を残せると確信して変則クラシック三冠を狙うよう羅田を説得した。


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