中山11レース、右内回り、2500メートル、第85回有馬記念

『晴れ渡る空のもと、これから始まります年末の中山レース場で行われる今年の総決算である第85回有馬記念。今年も中央競馬シーンを彩った名馬たちがこのレースに挑みます。

 4番には桜花賞馬ソメイヨシノ、7番には凱旋門賞四着ビリーザキッド。ダービー、そして宝塚で競い合ったナモトダービー、アクリームアルター、テムタバラードの三頭は11番、12番、13番で並んでおります。

 そして、今日の主役はこの馬をおいて他にいない。宝塚に続き、またしても大外16番のグリゼルダレジェン。今レースで引退です。ここまで無敗の最強女王が至高の七冠を獲り勇退するのか、それとも若き優駿たちが伝説を打ち倒すのか。有馬記念、まもなく発走です!


 ゲートが開いた! 全頭の絶好のスタートを切る! 先頭にはナモトダービー、アクリームアルター、一歩引いたところにテムタバラードが追従。外回り第三コーナー手前からスタートした戦いは全頭綺麗なコーナリングを見せて第四コーナーへ進みます。

 隊列はナモトダービー、アクリームアルター、テムタバラードが並んで先頭争い。その後ろにいるのはソメイヨシノ、ラストリーリウ、外にエルバンテ。中団にビリーザキッド、その後ろの内にアバンタイト、外にトリトンホール。続いてリストレッグ、ディギー、アルフォースブイ、チャズケルト、マグネットリブ、マシュマロパワー、ヴィクトルー、グレープアッシュ。そして最後方にはグリゼルダレジェン! この馬にはここがよく似合う! 先頭集団がコーナーを回り一度目のホームストレッチへ! 大きな歓声が優駿たちを迎えます。

 高低差2.2メートルの一度目の急坂を昇り、順位は変わらずナモトダービーがハナを進み第一コーナーを回ります。

 おっと、テムタバラードの幸永ここで鞭を使った。遅れが気になったのか鞭を振るいナモトダービーのハナを奪い先頭に躍り出る。合わせてアクリームアルターも前を狙う、ナモトダービーも興奮したのか速度を上げた! 鞍上の制止も聞かず速度が上がってきた! 掛かっている! 前三頭が掛かっているぞ! これはマズい! 中盤で後方が有利になるハイペースになった! 分かっているのか!? 最後方にはあのグリゼルダレジェンがいるぞ! 速度が上がったまま第二コーナーを回りバックストレッチを進みます!

 およそ370メートルのバックストレッチを加速したまま前三頭が駆ける! それに釣られて中団も前に詰めている! 先頭から最後方のグリゼルダレジェンまでおおよそ二十馬身! これは大丈夫かグリゼルダレジェン! ハナに立ったアクリームアルターが二度目の第三コーナーへ!

 スタミナを使いすぎたのか一周目のコーナリングとは程遠いロスをしながら先頭集団はコーナーを回ります! ここでソメイヨシノが詰めてくる! ビリーザキッドは詰まっている状況を嫌ったか外に回りました! グリゼルダレジェンにも鞭が入り加速し始めた! 先頭が最終コーナーを回った! グリゼルダレジェン届くのか!?

 二度目のホームストレッチで歓声を受け取りながら中山の短い直線をひた走るナモトダービー、アクリームアルター、テムタバラード! ソメイヨシノが猛追! 外からビリーザキッド! そして女王が怒涛の追い上げだ! 一頭二頭三頭! 大跳びで最後方から一頭また一頭と斬り捨てながら前を狙う! 先頭は2300メートルの最後の上り坂! 差し掛かった全頭の脚が鈍った! これはマズい! 女王が! 伝説が! 若人たちを引きちぎりにかかった! 短い短い中山の直線で! ソメイヨシノを抜き! キッドを撃ち落とし! 坂の半ばで三頭を撫で切った! これが! これがァっ! 七冠無敗の伝説の女王グリゼルダレジェンだァ! 後ろに三馬身差をつけて見事七冠達成! レジェンド・オブ・グリゼルダァ! その名の通り前人未到の記録を打ち立てて引退への花道を自ら彩りました! 二着にはソメイヨシノ! 三着争いは写真判定です!』



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