ダービーパドック周回
『8年ぶりの台覧競馬となっております2038年の東京優駿。ただいまパドック周回を行っております。それでは一頭ずつ紹介して参ります、解説は元ジョッキーで競馬アナリストの藤勝さんです。よろしくお願いします』
『よろしくお願いします。』
『さて、一頭ずつ見て参ります。1枠1番ダイチサンショウ、中浜騎手。494キロ、マイナス4キロです』
『あまり元気がないようですね、前走の京都新聞杯では2着でしたから期待していたのですがこれでは走らないのではないでしょうか』
『続きまして、1枠2番トップオンミー。館岡騎手です。482キロ、+4キロです』
『輝いてますねぇ、馬体がピカピカだ。文句なしで連には絡むでしょう!』
『2枠3番マインズアイス、梅丘騎手に乗り替わりです。482キロ、マイナス2キロです』
『折り合いのが付かなくて乗り替わりとなりましたが梅丘騎手とは相性がいいみたいですからね、好走に期待しましょう』
『2枠4番アクリームゼウス、巌騎手です。470キロ、+6キロです』
『気迫が感じられませんね…。鞍上との相性はかなりいいですが厳しい戦いになるでしょう』
『3枠5番ゴーワールド、川地騎手です。516キロ、+6キロです』
『大きいですねぇー、少しお腹にゆるみがあるので絞り切れてないのでしょう。掲示板は厳しそうです』
『3枠6番アマゾンチャック、乗り替わりで由原騎手。476キロ、マイナス2キロです』
『おーおー、暴れてますね。やる気は十分ですが体力は残るのでしょうか』
『4枠7番シロアタケです。鞍上は柴戸騎手。でしたが出走取り消しとなっております』
『昨日骨折が判明しましたからね、大事でないことを祈ります』
『4枠8番ハネウマサーキット、野未騎手です。490キロ増減なしです』
『毛艶がありませんね。少々ガレ気味に感じます。好走は難しいでしょう』
『5枠9番ヒガシロケット、山松騎手です。488キロ、+2キロです』
『やる気十分ですが少々張り切りすぎですね。レース中が心配です』
『5枠10番スズノフジヤマ、崎戸騎手です。474キロ、増減なしです』
『仕上げてきましたね、文句なしです。よほどのことがなければ掲示板に乗るでしょう』
『6枠11番オギノクロス、鞍上はウィザー騎手。446キロ、マイナス2キロです』
『ウィザー騎手は東京競馬場が四回目とのことです、4レースで走っていましたが芝の状態を掴めているかが鍵になると思います』
『6枠12番ロータリーです、鞍上は江之島騎手。496キロ、マイナス2キロ』
『えらく興奮してますね。おっと、うぉっ。これはゲート入りできるのでしょうか…』
『7枠13番ビュティアイランド、鞍上は海老名騎手。468キロ、プラス6キロです』
『メイチに仕上がってますね! これは獲りに来てます! 掲示板には間違いないでしょう!』
『7枠14番ウジタグランパ、四菱騎手。478キロ、プラス10キロです』
『やる気十分のようですね、結構いいところまで行きそうです』
『7枠15番ヤマノオオドロボウ、牧田騎手です。460キロ、プラス6キロです』
『これは…お腹がダルンダルンですね。気性難と聞いてますし調教が間に合わなかったのでしょう、厳しい戦いになりそうです』
『8枠16番アカキケッショウ、幸永騎手。410キロ、マイナス8キロです』
『出走するメンツの中ではもっとも小柄な馬です、それが吉と出るか凶と出るか。幸永騎手にかかっていますね』
『8枠17番カガヤクセントー、吉騎手。482キロ、マイナス4キロです』
『臆病な気質の馬ですからね…。隣が気になってロケットするか、出遅れるかしそうな気がします』
『8枠18番グリゼルダレジェン、鞍上はもちろん浅井騎手。472キロ、増減なしです』
『先週のメイチの仕上げほどじゃないですが、磨かれた身体になってますね。単勝も驚きの元返しで動かないようです。どの脚質でもいける馬ですから今回の走りも注目です』
『藤勝さんありがとうございました。それでは返し馬の後に本馬場入場です。発走までしばらくお待ちください』
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「いよいよですね」
「そうですね」
ダービー当日、俺は美浦トレセンの食堂でレースを眺めていた。
競馬場に行かないのはもちろん理由がある。
「それにしても…。凄い人だかりですね。鈴鹿オーナーがあちらにいたら大変なことになってそうです」
「いやまったくです。羅田さんと海老原さんが教えてくれてよかった」
実は金曜日の夜に羅田さんと海老原のオッサンが俺に忠告してくれたのだ。
おそらく先週と同じく競馬場一杯に人が来るので普段通りに観戦しにお前が来るとけが人が出る。観戦するなら馬主席に行くしかないってね。
馬主ロビーに行ってしまうと俺と縁を繋ぎたい人で競馬どころじゃないからな、今回は残念だが美浦に残って観戦することにした。
出走するまで手の空いた職員さんたちや居残りの厩務員さんたちなんかと馬券の読み合いをして一日遊んでた。(無論、手帳の効果で全的中だがそもそもトレセン関係者は馬券買えないのでセーフ)
そして、出走前のパドック周回をみながら今か今かと待ち望んでいるのだ。
「実際どうです? グリゼルダレジェンは勝てますか?」
「無論ですよ、勝ちます。警戒するのはトップオンミーとビュティアイランドですが、共に先行馬です。上手く体力を残さないとトップスピードまで昇ったレジェンの差し脚には勝てません」
「カガヤクセントーはどうです? 吉騎手ですけど」
「長いです。あの馬は2000までしか持たないでしょう。1800だったらレジェンといい勝負しそうですけどね」
「はー、よくお分かりになりますね」
「意外と簡単ですよ」
俺は魔法の手帳があるからな。
「お、スターターが上がりましたね」
「いよいよですか」
俺の周りにいたスタッフたちがガヤガヤと盛り上がってくる。
俺より興奮してないか?
レジェン、ここが大一番だ。目いっぱい走ってこい。
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