名駿 1月号 No.1129  特別インタビュー

名駿 1月号 No.1129


 特別インタビュー

 名牝の親 桜花牧場の鈴鹿オーナーに聞く 桜花牧場の秘密



成田大志記者(以下成田):本日は取材を快く受けていただきありがとうございます。


鈴鹿静時社長(以下鈴鹿):いえいえ、無理な取材や電話が続いてまして。こちらとしてもまともな記者の方にお願いする、よい機会でした。


成田:ははは(苦笑)。でも僕としてはしょうがないと思うところもあるんですよ。某競馬番組のアルテミスステークスでの予想のパーフェクトゲーム。あんなことできる人なんていないんですから。


鈴鹿:アレはインパクト目的でしたから。普段は馬券を買ったりはしないんです。


成田:おや、それはどうしてですか?


鈴鹿:もちろん、当ててしまうからですね。真剣に馬券買ってる人たちの配当を下げるのは心が痛みますから。


成田:もう発言が…(笑い)。番組でも触れていましたけど本当に見ただけでわかるんですか?


鈴鹿:はい、じっくりとパドックを見ればね。まず外すことはないと思いますよ。


ーーー※筆者の成田はこの時の社長の目を見て本当のことだと悟った。


成田:そんな凄い能力を持つ鈴鹿社長に改めてお聞きしたいのですが、お手持ちの名馬グリゼルダレジェン号。強さの秘密はなんでしょう?


鈴鹿:様々な要因がありますが第一に身体のバネですね、走っているときの跳びの良さが足の速さを実現しています。次に頭の良さですね。成田さんもご存じですよね?


成田:ええ、吉騎手曰くレースペースを自分で作っているとか。


鈴鹿:その通りですね、位置取りなんかも指示すれば自分で決めてしまうので騎手は詰まりそうな時のフォローをしてばかりらしいです。フォローされたときは素直に従うので自分に経験が足りないと分かっているんですね。


成田:聞けば聞くほど本当に馬なのかと感じてしまいますね(笑い)。初戦は落馬の影響でいきなり乗り替わりでしたが不安はありましたか?


鈴鹿:いえ、騎手探しが間に合うかの心配はしましたが吉騎手が乗ると分かった時点でもう大丈夫だと確信しましたね。多少出遅れても捲れる足は既にあったので。


成田:なるほど、そこから浅井騎手に再度乗り替わったのはどういうことでしょう?


鈴鹿:足立騎手が右手小指の粉砕骨折で乗れなくなったので仕方なくが本音です。吉騎手にお願いしようと思いましたがトップジョッキーですから、零細馬主と低空飛行を続ける調教師の馬をビッグタイトルで優先してくれるかどうかの懸念もありました。

 そこで海老原調教師からの推薦で羅田調教師が浅井騎手に決めて私がOKを出したわけですね。


成田:そこから浅井グリゼルダレジェンのタッグが決まったと、伝説に歴史ありですね!


鈴鹿:そうですね、足立騎手が落馬しなければ乗り替わりもなかったですし、吉騎手がトップリーディングのベテランジョッキーでなければ騎乗依頼をしていたでしょうし、浅井騎手はラッキーではあると思いますよ。


成田:浅井騎手に乗り替わって重賞三連勝ですが、どういった面持ちでしょう?


鈴鹿:嫌われることを恐れずに言うと、まだまだ経験が浅いなと思いますね。追ってはいけないところで追う、追わなければいけないところで追っていないのが目立ちます。しかし、折り合い自体は欠いていないので相性自体はいいのでしょうね。足立騎手、吉騎手と組んだ時よりはリラックスはしているので。


成田:そこまでわかってしまうんですね…。ありがとうございます、グリゼルダレジェン号のことはよくわかりました。続いて桜花牧場の謎について聞きたいのですが?


鈴鹿:謎って(笑い)。


成田:謎ですよ謎、特に聞きたいのは診療所とあの装置ですね!


鈴鹿:診療所は普通の診療所ですよ。万が一を考えて公開しなかっただけです。


成田:ですが、海外から取り寄せた秘密の試薬とかあるんですよね? 山田さんが言ってました。


ーーー※山田さんとは桜花牧場の広報担当である。筆者が桜花島見学に赴いた際に

大変お世話になった。


鈴鹿:あー、あとでシバいとかないといけませんね。そうですね、仮に予後不良等になった場合の一命をとりとめたりする薬剤自体はあります。


成田:!? それってすごいものでは? どうして広まらないんですか?


鈴鹿:一つはその試薬を使うと競走馬としては死にます。詳しく言うと長くなるので簡潔に言うと骨折箇所に注薬でカルシウムの膜を作るんですね。痛みはそれで収まるんですが無理に塞ぐので関節等だと稼働に悪影響が出ます。延命にしか使えない試薬なんです。


成田:それでも凄いと思いますがお披露目にならない理由はそれ以外にも?


鈴鹿:はい、単純に高いんです。一本五十ミリリットルで六百万円。酷いときは二本で足りませんからね。


成田:それは納得の理由です。他にはどのようなものが?


鈴鹿:食いつきますねぇ(笑い)。投薬することで発情させる薬だとか、原理は詳しく言えないですけど受胎確率をほぼ百パーセントにするものもありますね


成田:凄い! それもお値段が?


鈴鹿:まあ…。これは伏せておきましょうか。自然に任せるのが一番と言えば一番ですから。


成田:絶対に記事を見た関係者から電話が来ると思いますよ(笑い)。


鈴鹿:そのときは山田君が被害を受けてくれるでしょう(笑い)。


成田:診療所の凄さはわかりました。いよいよ、あの施設のことをお伺いしたいのですが?


ーーー※施設の写真は次ページにまとめて掲載しています。『あの施設』とこの先、具体的な説明等が出なかったので説明も写真に添付しています。


鈴鹿:アレはですね…。浅井騎手の特訓場として作ったんですよ。


成田:(大笑い)。凄い!


鈴鹿:でしょう? お金かかってますからね。それをどこからか吉騎手と足立騎手が聞きつけて使わせてくれと懇願されたので…。(苦笑い)。足立騎手は羅田さんの身内みたいなもの、吉騎手は無理を言って新馬戦に乗ってもらったので。まあいいかなと(笑い)。


成田:館岡騎手も触られたんですよね?


鈴鹿:吉騎手が映像に残して浅井騎手の教材にするならトップクラスのジョッキーをもう一人呼んで自分と競わせたほうが捌き方の見本になるのでは、と言ってくださいまして。吉騎手が連れてきてくださいました。正直、二人で好きな馬に乗って戦いたいだけじゃないかと思いましたけどね。


成田:(笑い)。ですよね。歴代の名馬に乗って戦えるって素人の私でも楽しかったですもん。


ーーー※筆者は2001年のJCD《ジャパンカップダート》に騎乗し、白い怪物に勝とうとしたが史実より酷い大差をつけられて十四回敗北した。


鈴鹿:見学の皆さんに楽しんでいただけて何よりです。ジョッキー志望の十二歳の女の子が一番うまかったのには驚きましたけどね。年齢じゃないんだなって。


成田:対戦でボコボコにされました(笑い)。騎手の腕って本当にあるんだなって実感しましたよもう。


鈴鹿:あ、そういえば。あの時に許可取ってないから見せられなかった映像は吉騎手と館岡騎手の許可が下りたので特典にでもしてください。


成田:ありがとうございます! やっぱり皆さんにも臨場感を味わっていただきたいので助かります!


ーーー※巻末のDVDでご覧いただけます。


成田:あの装置はどこかで販売するつもりですか? トレセンなんかに置くといいと愚孝しますけど。


鈴鹿:自家用で作ったものなので値段度外視なんですよ。販売すると多分恐ろしい金額になりますね。


成田:値段を聞きたいような聞きたくないような(苦笑い)。


ーーー※社長が手で示してくれましたがあえて伏せておく額です。


鈴鹿:まあ、買えませんよね。


成田:その価値がある騎乗を浅井騎手にも望むと?


鈴鹿:この装置を使った特訓をさせられていることに比べればG1馬に乗ることぐらいわけないでしょう?


成田:(大爆笑)。確かに。


鈴鹿:実力はあるのでメンタル育成の一助になればと思いましたね。


成田:なるほど、鈴鹿社長がこのインタビューを通してどんな方か理解できた気がします。(笑い)。山田さんがこちらを見ているのでそろそろお時間のようです、今日はどうもありがとうございました。


鈴鹿:ありがとうございました。



ーーー桜花島へは自由に行き来することはできません。無断で侵入した場合、住居不法侵入罪に問われます。今後も見学ツアーを組む予定があるとのことなので公式ホームページ、トリッター等をチェックすることをオススメします。


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