第12話
翌日俺はいつもの時間に目を覚まし、アパートを出る。
外の景色も少しは見慣れてきた。
太陽の日差し、冷たい風さえ心地よい。
カエさんと初めて会った場所を横目に早足で現場に向かう。
「おはようございます!」
「おーアニおはよう」
「トンさん!」
見慣れた顔‥‥ではないが、トンさんを見て少しホッとしていた。
この二日間会ってなかっただけで懐かしささえ感じていた。
「なんだよ恋する乙女みてーな顔して」
「なんかトンさんの顔見ると安心しちゃって」
「おいおい、俺、男は勘弁だぞ」
「そうゆう意味じゃないですよ」
うん、いつものトンさんだ。
話もそこそこに作業に取り掛かる。
「そういやアニ知ってるか?」
「何をですか?」
「最近女性だけに出来た制度の事だよ」
「制度?知りませんけど」
俺が地上の制度なんか知ってる訳ない。
「なんかよ、30歳を過ぎても未経験の女性だけに配られてるスイッチってのがあるらしくてよ、それがなんか色々問題ありらしいぞ」
「スイッチ?」
嫌な予感がする。
「それが、経験済みになると回収されるらしくて女性たちはそのスイッチを回収してもらう事に躍起になってるらしい」
「どうしてそんな外道な事を‥‥」
「少子化対策だってよ」
「少子化対策?意味が分からないですね」
「本当だよ、まあハーレム状態を作りたいんだろうけど、俺たちには無縁だな!ハハッ!」
俺たちって‥‥。
トンさんと一緒にしてほしくない。
しかし、ここで疑問が生じる。
カエさんはあんなに綺麗なのになんで未経験なんだろう。
それに性格も悪くない。
「トンさん、それで問題ありって言ってましたけど?」
「あー、ニュースでちょこっと見たけど、役所に行って金出したらスイッチ保持者が閲覧出来るみてーなんだよ」
「げっ!なんちゅー事を。それは問題大ありですね」
「少し考えれば分かる事なんだろうけどよ、トラブルが絶えねーんだと」
もしトンさんの話が本当ならカエさんは‥‥。
「ちょっと俺急用思い出したんで帰ります!」
「おい!まだ作業残ってるんだぞ!」
「すいません!ちゃんと明日しますから!」
俺は居ても立っても居られなくなりカエさんに会いに行く事にした。
作業着のまま街に飛び出したはいいが、そういえばカエさんの家知らない。
どこで働いてるのかも知らない、どうしよう。
‥‥そうだ!スイッチ!
こんな時に役に立つとは、便利と言えば便利だが、俺はカエさんの人権を侵害しないか少し不安だった。
でも来れる時は来るって言ってたし結局は本人次第なら大丈夫だよな?
アパートに急いで戻り、何も考えずスイッチを押そうとしたが、待てよ、もし今来るってなると俺は作業着だし汚れてる。
うん、風呂入ってから押そう。
期待してるわけではない、あくまで礼儀として綺麗にしておきたいだけだ。
しかし、体を洗いながらカエさんの体の密着を思い出す。
カエさんの胸、すごく柔らかかったなぁ。
ちょっと谷間も見えちゃったりして‥‥。
あ、やばっ‥‥‥‥。
仕方ない、俺も男だし。
そう自分に言い聞かせ、スッキリして風呂を出る。
よし、押すぞ‥‥!
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