24話「童貞は体を清めて、いざエッチな店へ!!―後編―」

 俺とデニスはエリクの後を追って入店を果たすと店の中には噂通り、多種多様な異種族達が際どい格好をしながら接客をしていた。

 更に店内は雰囲気作りを大事にしているのか、妙にピンク色の明かり目立っている。


「お、おぉ……。いざ店内に入ると緊張してくるな」

「そ、そうだな……。取り敢えず俺達はどうしたらいいんだ?」


 俺は胸の谷間が大胆にも露出している女性を眺めながら言うと、デニスも他の女性に視線が釘付けのようだった。


 しかし店内に居る異種族とは本当に多種多様だ。

 俺が眺めていた女性はサキュバスタイプのようで、頭に小さな角と黒色の羽と尻尾が生えていた。なぜサキュバスか分かるかと言うと、胸元に種族名が書かれた札が付いているからだ。


「慌てるな二人とも。直ぐに店員さんが近づいてきて俺達に説明してくれる筈だ」


 俺とデニスは女性を舐め回すような視線を送り続けていると、隣から冷静な声色でエリクが俺達に向けて言ってきた。


 なぜコイツはこんなにも際どい格好をした女性達が居る中で冷静でいられるのだろうか。

 いつもカルラにセクハラ紛いな事をして殴られているというのに……。


 だがエリクの言っていた事は本当のようで、俺達の前に一人の女性が姿を現した。


「いらっしゃいお兄さん達! ここ初めてだよね? というか今日オープンだから当たり前だよねぇ! ははっ!」


 その女性はテンションが高めのようで背中から鳥の羽ようなモノが生えていた。

 名札を見るにハーピーという種族のようだ。

 ゲームとかで出てくるハーピーは半人半魔の姿をしているが、どうやらこの異世界では手足も人間に近い存在らしい。


「そ、そうです! 今日が初めてです! ……ですがこのあとは一体どうしたら?」

「え~っとね。まずはどんな女性がタイプだとか、どんなプレイ内容が良いとかを教えて貰う為にアンケートを書いてもわないといけないから、私についてきて~!」


 急にオドオドし始めたエリクがハーピーの女性に尋ねると、どうやらアンケート用紙に色々と記入をしないといけないらしい。

 確かに日本のそういうお店でも、先に好みの女性をネットとかで確認してからプレイ内容を決めてするからな。当たり前のことだろう。


「じゃぁ、茶髪のお兄さんはこっちで書いてね。あとそこの微妙にイケメン風のお兄さんはそっちで書いてね~!」

「「は、はいっす……!」」


 ハーピーの女性に案内されて個室らしき部屋が数個設置さている場所に着くと、エリクとデニスは言われるがままに別々の個室へと入って行った。


 ……えっ、ちょっとまって。取り残された俺は一体どうすれば?


「あ、あの。俺はどうしたらいいんですか……?」


 戸惑いながらもハーピーの女性に聞くと、


「大丈夫だよ! お兄さんもちゃんとアンケート書いて貰うから! でもちょうどさっきのお兄さん方で個室が埋まっちゃたからちょっと待ってもうけうどね。ごめんねっ!」


 エリクとデニスが入ったのが最後で個室が埋まったらしく、俺は空き室待ちらしい。

 畜生ッ! ここにきて不運のステータスが影響しがやったのか?


 ……だがまぁいい。

 待っている間に店内の女性を見まくってどの女性にするか決めておこう。

 

 俺としてはサキュバスのお姉さんか、エルフのお姉さんで悩んでいる所だ。

 そして肝心のプレイ内容は既に決めてあるから心配はない。


「あっ、六番個室空いたから入っていいよ~!」

「うっす! 案内ありがとうございます!」


 俺は空いた六番個室に視線を向けて歩き出すと、目の前にはちょうどアンケートを書き終わって出てきたのであろうが歩いていた。

 そしてその後ろ姿を見ると、俺には何処となく見覚えのある人物が頭を過ぎった。

 

「あ、あれはもしかして……マルクスか!?」


 そう、ギルドに初めて俺が入った時に色々と教えてくれたり、飛竜襲来の時の防衛戦でも色々と教えてくれた、あのマルクスだ。彼のトレードマークは上半身裸をこの季節でも貫いている所だ。


「ま、まじか。あの生粋の冒険者っぽいマルクスでも、こういう店に来るんだな……」


 俺はここでは変に声を掛けないようにマルクスの後ろ姿をだけを見て思った。


 そして空いた六番個室へと入ると、中は人が二人ぐらい入れるスペースの空間であった。

 見た感じ別に個室ではないようが気がするが……。一応個室と言われているようだ。


「えーっと。この机の上に置いてあるアンケート用紙に要望的なのを書けばいいのか?」


 ソファに座りながら視線を前に向けると、机には一枚の紙とペンが置かれている状況だ。

 俺は紙に書かれている内容をじっくりと見ていくと、やはりアンケート用紙には女性のタイプや種族、プレイ内容、とかを詳細に書く必要があるみたいだ。


「そうだな……。取り敢えず考えてきたプレイ内容とかがちゃんと大丈夫なのかどうか知りたい所だ。うーむ、ハーピーの女性に聞いとくべきだったかも知れん」


 両腕を組みながら困り果てていると、俺は横に店員呼び出し用の物だと思われる呼び出しベルが置いてあるのを発見した。


「これを鳴らせば店員が来てくれるのだろうか? ……まぁそれしか方法がない気もするがな」


 俺は考えるのを辞めて右手でそっとベルを叩くと、チーンというベル特有の高い音が室内に響き渡り直ぐに個室のドアがノックされた。


「ど、どうぞ!」


 緊張しながらも返事をすると、ドアは静かに開かれて現れたのは先程俺が店内に入って一番最初に目にしていたサキュバスのお姉さんだった。

 髪は黒色をしていて腰まで届きそうなぐらい長髪で、胸はパトリシアと同じぐらい大きい巨乳だ。


「お待たせしましたぁ。ご要件はなんでしょうかぁ?」


 サキュバスのお姉さんは体全体を艶かしく動かしながら隣に座ると、甘いような香りが漂ってきて頭がぼーっとしてきた。

 

「あぁ、すみませんね。サキュバスは体から媚薬作用のフェロモンが出ているので、長時間一緒に居ると意識が飛びますよぉ。取り敢えず今はフェロモン抑えときますね」

「お、おねがいしまーす……っ」


 そう言ってサキュバスのお姉さんが指を鳴らすと、俺はぼーっとしていた意識が鮮明に戻ってきた。……恐るべしサキュバスの媚薬フェロモン。


「それでご要件はなんですかぁ?」

「あ、その……。実はここのプレイ内容ってどこまで大丈夫なのか聞きたくて」


 俺は紙を持ちながらサキュバスのお姉さんに聞くと、お姉さんはクスリと笑いながら答えたくれた。


「お兄さん見た目によらず凄く変態さんだね。普通はプレイ内容でどこまで大丈夫なんて聞く人いないよぉ。でも言うなればハード系は駄目ですかね。あとは担当の女性によりますぅ」

「ま、まじっすか……! つまりアレをアレしてアレするのも大丈夫ってことですか!?」

「はぁい大丈夫ですよぉ。担当の女子によりますけどぉ」


 サキュバスのお姉さんからプレイ内容は”ハード系”以外なら大丈夫だという事を聞くと、俺の考えていたプレイ内容は大丈夫のようだ。よしよし、ならば後は好みの女性と種族を決めるだけだな。


「あぁ、そう言えばですけどぉ。今日は開店セールということでこちらが無料になってますけど、お試しになりますかぁ?」

「無料……?」


 サキュバスのお姉さんは胸の谷間から一枚の紙切れを取り出してそれを俺に渡してくると、そこには【耳かき体験&膝枕込】と書かれたクーポン券のような物であった。


「おぉぉ!! 是非是非おねがいしまーずッ!!」

 

 俺は耳かきという字が書かれたいるのを見ると、即行で返事を帰していた。

 そう、俺には死ぬまでに叶えときたい夢の一つで女性の膝枕で耳かきというのがあるのだ。


 まさかその夢がこんな所で叶おうとは……。流石は異世界だ常に規格外の事が起こりやがる!


「分かりましたぁ。それじゃぁ耳かき用具を取ってきますので、少しお待ち下さいね」

「あれ? このアンケート用紙は……?」


 サキュバスのお姉さんはソファから立ち上がって部屋を出ようとすると、俺は肝心のアンケート用紙を忘れている事に気が付いた。


「あぁ、すみません。耳かき体験はサキュバス限定になっていますぅ。そして他のサキュバス達は全員が耳かき体験を実施中で空いてるのが私だけなので……それでも大丈夫でしょうかぁ?」


 俺の言葉にサキュバスのお姉さんは振り返ると、胸の谷間を寄せながら上目遣いで返した。

 当然それに対しての俺の返事は決まってる。何故なら俺は…………!


「もちろんです。紳士の俺は女性を見た目で判断なんて知ませんから」

「ホントですかぁ! ありがとうございますぅ。それではお待ち下さい」


 そう、男はいつだってその場のノリと雰囲気とエッチな服装を着たお姉さんには勝てないのだ。

 あのボンテージの服装は刺激が強すぎるだろ……。あぁ、来て良かったぜ!!


 今頃、エリクとデニスも楽しんでいる頃に違いない。

 もしくは耳かき体験をしてもらいってるかもな。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お待たせしましたぁ。それでは早速していきますのでソファに座りながら、頭だけ私の太ももにお願いしますぅ」

「は、はいっ! お願いしますッッ!」


 サキュバスのお姉さんが耳かき用具を持って部屋に戻ってくると、俺は言われた通りにソファに座ってから頭だけお姉さんの太ももへと預けた。


「んっ……。お兄さんの髪がチクチクと太もも当たって感じちゃいますぅ~」

「ああっ!? す、すみません!」


 初めて女性の太もものを頬と頭全体で感じると、それはまさに柔らかくて弾力性もあり凄く幸せな気分に浸れた。日本に居たら絶対に起きなかったイベントだと今なら断言できる。


「それでは耳かきしていくので動いちゃダメですよぉ」


 サキュバスお姉さんは俺の耳に向けて一息を吹きかけてくると、耳かき棒をゆっくりと入れてきた。妙にこそばゆい感覚が耳から全身に伝わってくるのが分かる。


「お兄さん冒険者さんですよね~? 意外と耳の中が綺麗で驚きですぅ」

「ま、まじですか。全然掃除とかしてないんですけどね……」


 耳かき棒で内側をカリカリッと削るような音が聞こえると、俺は心地よい感覚に浸れている。

 

 しかし改めて思うと俺は今、男として最高のシチュエーションを体験しているのだろうな。

 上に視線を向ければ大きい胸とお姉さんの可愛いらしい顔が見えるし、頬は太もものスベスベとした感触を余すことなく感じられる。


「にしてもお兄さんの髪は良い匂いがしますね~。私この匂い好きですよぉ」

「本当ですか? それは良かったです!」


 サキュバスのお姉さんが俺の髪の匂いを嗅ぐ素振りを見せて言うと、これはヴィクトリアから勝手に借りたシャンプーの匂いなんだけどな。

 だがそのおかげでサキュバスのお姉さんには好印象のようだ。ありがとうヴィクトリア。






 そのあともサキュバスお姉さんによる丁寧な耳かきが行われ、俺は夢心地に浸りながら癒されていた。そしてあっという間に時間が過ぎていくと、


「それでは耳かき体験は以上になりますぅ。ですがお兄さんには特別サービスで私が全身マッサージをしてあげますよぉ」

「と、特別サービス?」


 耳かきの終わりと同時にそんな事を言われた。

 俺は全身マッサージという言葉に凄く興味を惹かれているが、まずは特サービスってのが気になる。


「お店側に内緒で私が個人的にマッサージをするって意味ですよぉ。耳かき中に考えていたですけどぉ。お兄さんって飛竜が街に襲ってきた時に一番活躍した冒険者さんですよね?」

「えっ!? ……まぁそうですけど、一体それを何処で?」


 サキュバスのお姉さんから放たれた言葉に俺は唖然としている。

 

「ほんとぉですかぁ!! 良かったぁ。実は私が耳かき用具を取りに行っている時に、上半身裸の大男がさんが待機室で他の人に言っているのをたまたま聞いちゃいましてぇ。それでその話の特徴に右腕に白い装備をつけている若者が特に印象的でしてぇ。よく見たらお兄さんの右手にそれが付いていたのでもしや? と思いましてね」


 やべえ……。その上半身裸の大男って絶対にマルクスの事だよな?

 なんであの人はこんな所でそんな事を話してるんだよ! 時と場所を弁えてくれ!


 ……あれか? 待機室で暇だったから、たまたま話しちゃったパティーンのやつなのか?


「あの~ぉ。それでお兄さんが飛竜を倒してくれたおかげで私達はこのお店を開店する事が出来たのでぇ、これはお礼としてマッサージを受けて貰いたいですぅ」

「……そう言うことなら遠慮することは出来ないですね。是非お願いしますっ!」

「はぁい。任せといて下さい~。とびっきりの刺激的なマッサージをしてあげますよぉ」


 俺はお姉さんに”お礼”としてマッサージをしてもらう事になると、その後は別の部屋へと案内された。そしてその別の部屋にはマッサージ台が置かれていて、俺は服を全て脱いで寝かされるとタオルを一枚体に巻きつけてマッサージを受ける事になった。


「そじゃぁ、私のテクを駆使して全身をほぐしていきますよぉ~」


 サキュバスのお姉さんは手にローションらしきヌメヌメした液体を絡めながら言うと、俺はいよいよこの瞬間が来たかと思った。


「えぇ、お願いしまーーずっ!!」






 ――――だが結果は俺の思っていたのと随分違った。

 俺はてっきり大人のマッサージを期待していたのだが、絶賛今受けているのは普通のマッサージだ。


 しかもとびきり上手なのだ。

 凝り固まった肩や腰がほぐれていくのが実感できるほどにな。


 だけど……だけど、だけど、だけど!!


「思ってたんのと違ーーーーうっ!!」


 俺はマッサージ中にそんな事を叫ぶとサキュバスのお姉さんは驚いた表情をしていた。

 すまないお姉さん、別にマッサージ悪い訳ではないのだ。

 しかし叫ばずには居られなかったのだ。許して欲しい。


 …………その後もマッサージを余すことなく全身で受け続けると、クエストとかで疲労の溜まった体はすっかりと柔らかくなって、身も心も完全に癒された気分で俺は店を後にし家へと帰った。

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