17話「ギルド最強の冒険者……?」
グラナーダさんにパトリシアの剣を修繕してもらうように頼んでから数日が経過した。
といっても五日程度の経過だ。
その間に俺達は家の家具を自分達で作って配置したり、パトリシアが夜な夜な剣がどうのこうの言っていて怖くなり何度か様子見がてら鍛冶屋に行ったりとして過ごしていた。
まぁ、前衛役のパトリシアが不在なのでクエストには行けていない状況だ。
しかしそんな生活もそれまでだ!
今日やっとパトリシアの剣が直るとこのことらしいので、俺達は朝一で剣を受け取りにグラナーダさんの元へと向かったのだ。
「ねえユウキ? なんで私達にこんな白い服を着せたんですの?」
「あまり深い意味はないが……ほら、剣が直るっていうから神聖な行事じゃないか。俺の国でそういう大事な行事には白服って決まってるんだよ」
「あらそうですの。なら納得ですわ」
鍛冶屋目の前にして道を歩いていると突然パトリシアから話題を振られたが、まったくもってそんな事はない。白服を皆に着せているのはただ単に鍛冶屋が暑くて汗が体中から吹き出してくるからだ。ふっ……チョロいぜパトリシア。
つまり白服を着ていれば、汗のせいで服が透けて更には体に引っ付いて中身の下着と体のラインがくっきりはっきり分かるという思春期男子にとっては最高のシチュエーションなのだ!
ついで言っておくとヴィクトリアとユリアも最初は不思議そうな顔をしていたが、適当にお前は美人だから白服が似合うだの、魔力が高まる特殊な糸を使ってだな……とか言ってうまく丸め込んだぜ。
そして俺達は鍛冶屋へと到着すると、
「ちわーっす! パトリシアの剣を受け取りに来ました!」
元気よく中に居るはずのグラナーダさんに声を送る。
「おっと来たね! バッチリと仕上がってるよ!」
そう言って奥からグラナーダさんが姿を現すと、パトリシアの剣を右手に持ちながら近づいて来てくれた。相変わらず上半身が薄着な人で汗の匂いが凄いぜ。
こういうフェチが好きな人ならここは天国かも知れないな。
「わ、私の剣! ああ、こんなに立派になって……!」
グラナーダさんが剣を持って近づいて来るや否や、パトリシアは駆け寄って剣をじっと見ている。
「はいどうぞ! ヴィクトリアちゃんが持っていた星屑の鉱石が思った以上に純度の濃い鉱石だったから、かなりの頑丈に修繕できたと思うよ!」
「本当ですの!? あ、ありがとうございますですわ!」
パトリシアは綺麗に修繕された剣を受け取ると、鞘から剣を引き抜いて刀身をニヤニヤしながら眺めている。
というか俺はさっきの言葉を聞き逃さなかったぞ。
初めて聞いたぜ。ありがとうございますの後に【ですわ】口調付ける人。
もはやあれは拘りの領域なのか?
「それとだね! 君達の武器もちゃんと強化しておいたよ!」
「おぉぉ!! ありがとうございますッ! 何から何まで本当に申し訳ないっす!」
実はパトリシアの剣をちょくちょく確認しに来ていた際に、グラナーダさんに俺達の武器を強化してもらうように頼んでいたのだ。というかグラナーダさんが不意に俺達の武器も見せて欲しいとか食い気味で言い始めたので、余すことなく見せてあげたのだ。
そうしたらグラナーダさんは「この際だから大量に余っているエグマ鉱石を使って君達全員の武器を強化してあげよう! 無論お代は貰わないから安心して欲しい!」と気前よく言ってくれたので、その言葉に甘える事にしたのだ。
「気にしないでいいよ~! こっちとしても初めて見る武器に興奮が止まらなくてね! もうそれは寝る間も惜しんで……!」
グラナーダさんはまるで無邪気な子供のように目をキラキラと輝かせて、俺に顔を近づい言ってくると、汗の滴る顔に芳醇な匂いが漂う。
俺には匂いフェチがないと思っていたが……案外あるのかも知れないと悟った瞬間である。
「さあさあ、ここに置いてあるのが強化を終えた君達の武器だよ! どうだね!?」
グラナーダさんに手を引かれて奥の部屋に連れてこられると、その部屋には木製のテーブルが置いてあり、その上に俺達の武器が置かれていた。
ヴィクトリアの大盾はサイズ的に机には乗らないで、横の壁に立てかけてあるがな。
「お、おぉ……凄いな。見るからに分かる。この繊細に施された強化の数々が!」
「流石はオレの親友だ! 惚れ惚れするぐらいに良い仕事をしてくれるな! オレが男だったら抱いているとこだぞ! はっはは!」
俺とユリアは強化された武器を手に取り、じっくりと確認すると直感でも伝わってくる。
俺は長年こいつを使ってきたんだ。
今のこのブレードは前より増してかなり強くなっていると確信が持てる!
きっとローレット相手でも斬る事が可能だろう。前は刃が通らなかったからな。
「私の大盾は前より純白度が遥かに高くなっていて最高ですよ! 見てください! この純白をっ!!」
「まて向けるな! 反射……うぎゃあぁぁぁ!!」
ヴィクトリアが大盾は俺達の方に向けてくると、部屋の明かりを反射して俺の視覚を一点集中で刺激してくる。
これは暗いとこから急に明るい所に出た時に眼球に痛みが走る症状に似ている。
そして今の俺はその痛みを何倍にも凝縮したような……とどのつまり超痛い!!
「目があぁぁあ!! 目がぁぁああ!」
蹲って両手で両目を抑えているが、眼球が焼けるように痛い……。
「おい大丈夫かユウキ? 回復魔法かけとくぞ。【ヒールペイン】」
「うがやぁあああぁ!?」
ユリアから不穏な言葉が聞こえてくると俺は眼球の痛みは消えたが、今度は全身の痛みで更に悶える事になった。もういっそ殺し……て……。
「賑やかなパーティだね~! でも部屋で暴れられると困るから、そのぐらいにしておいてね!」
そのグラナーダさんの声には少しだけ覇気が篭っているような気がした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
俺達はグラナーダさんに優しく怒られると、これ以上は迷惑をかけれないと判断して鍛冶屋を後にして現在は街の方に向かって歩いている。
もちろんグラナーダさんには、お礼の言葉はいっぱい贈らせて貰ったぜ。
あと完全に武器と痛みのせいで忘れていたのだが、俺は合法スケベを行う為にパーティメンバーに白服を着せたのに、こういう時に限って熱源が近い竈付近に行かなかったので俺の作戦は無意味となった。
くそぅ……残念でならないが、まだチャンスはあるだろう。きっとな。
「ユウキユウキ! 私は直ぐにでもクエストに行ってこの剣の切れ味を試したいのですの!」
「ああ大丈夫だぞ。ちょうど今から簡単なクエストに行こうかと思っていたからな」
俺とパトリシアがこんな会話をしていると横からヴィクトリアが「え? 今から?」みたいな嫌そうな顔をしてきた。なんだ文句でもあるのか、俺の目を潰した女神よ。
「それ本気で言ってるんですか? 私は家でぐうたらしたいんですけど」
「……お前ってさ。何もしないで生活できると思ってる? 先に言っておくと家の代金を払った時にうちの財産は残り五万パメラと家具と家ぐらいだぞ」
最近はクエストに行っていなかったせいか、ヴィクトリアが妙にニート気味になっているのだ。
そしてさっきも言った通り、うちの財産は既に底を尽き掛けているのだ。
だから一刻も早くクエストをこなしていき、安心する額を稼ぎたいのだ!
「ま、マジですか……。ってことは私の生き甲斐のステーキも……?」
「ああ無論ないな。てか、手持ちが十万超えるまで贅沢なんてさせないからな! それが嫌ならクエストに行くしかないぞ! 分かったな!!」
「は、はい……」
取り敢えず気迫と現実問題を押し付ける事で、ヴィクトリアは折れたようだ。
よし、早速クエストを受けにギルドへ出発だ……っとその前に。
「すまないがその白服はやっぱり着替えてくれないか? 本当に何かすまないけど」
俺はもはや何の意味も成さなくなった白服を着替えるように皆に言うと、ヴィクトリア達は顔を見合わせてから口角を少し上げて、
「ふっ……やっぱりユウキって単純ですよね」
「汗で服が透けてそこから下着を見ようだなんて、そんな事を思いつくのはユウキだけですわ」
「そうだぞ。だから敢えて竈付近には近づかなかったんだ。残念だったな! はっはは!」
最初から全てお見通しだっと言わんばかりに言ってきた。
なんだよ……最初からバレていたのかよ……。
てかコイツらとの付き合いもそこそこになるが、大分俺の考えが読まれるようになってきたな。
これは由々しき事態かも知れん。
「そうかい。じゃぁ早く着替える為に一旦家に戻ろうぜ?」
「あれ意外ですね。言い訳とかないんですか?」
「ないな。俺が白服を着せた理由はその通りだし、俺はお前達の下着が見たかったんだよ!」
ここで変に言い訳しても無駄な事は既に分かっている。
ゆえにここは認めて全て答えた方がまだ潔いだろう。
「何で堂々と変態発言をしているのに、コイツは誇らしげなんだ……。そういうとこは未だに理解に苦しむ」
ユリアが何か言っていた気がするが、俺達はぎこちない状態で家へと戻る事になった。
――――そして三人が着替えを終えてギルドの前へと到着すると。
「おぉ? なんだなんだ? 妙にギルドの中が騒がしいな」
「そうですか? いつも通りだと思いますけどね?」
ギルドの中から野太い声や女性の黄色い悲鳴など、数々の色んな声がギルドから漏れ出して外にまで聞こえているのだ。
まぁ確かにヴィクトリアの言うとり、いつもの光景だと思えばそうなのだが……。
どうも俺には違っているように思えて仕方ない。
「こんなとこで固まっていてもしょうがないですわ。中に入りますわよ」
「うむ、久々のクエストだな! ゴールドランクにもアップしたし、武器の強化も終えた! つまり万全の状況でSランククエストが受けられるな!」
パトリシアがギルドの扉を開けて中に入っていくと、続いてユリアも入っていき俺とヴィクトリアは渋い顔をしながら後をついていった。
そう言えばゴールドランクに昇進していたのを忘れいたな。
ああ、ユリアが面倒いクエストを拾ってこなければいいが……。
「な、なな何だこれは……!?」
俺がギルドの中に入って最初に目にしたのは、恐らくこの騒ぎの根本とも言える部分。
そう、酒場のとある一角の席が人だかりで埋まっているのだ。
「なにがどうなっ……。おっとぉ?」
俺はちょうどよくその人だかりに紛れていたエリクを見つけると、この状況を知りたいが為に服を引っ張って人だかりから引き離す。
「なんだ誰だよ!? いまちょうど武勇伝を……ってユウキか?」
「ああそうだ俺だ。すまないがこの騒ぎは一体なんだ?」
「あー……そっか。ユウキはまだ会っていなかったな。このギルドの切り札とも言える最強の冒険者にッ!」
最強の冒険者……? ギルドの切り札?
エリクが放つその言葉の全ては、俺がここに来て初めて聞く言葉であった。
「まぁここは先輩の俺が全部教えてやるよ!」
「まじっすか! あざっす先輩!」
というこで先輩冒険者をアピールしてきたエリクに、色々と教えて貰える事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます