光の先輩、闇の後輩
げこげこ天秤
1
風が陽気を連れて来る。
春の訪れを告げたのは桜だったか、それとも鶯だったか。いずれにせよ、この季節が、
「……今日も……来てくれるかな?」
気がつけば、そんなことを口走っていた。
中学に入ると、
憧れの存在。――と言ってしまえば月並みな表現になる。高身長で、端正な顔立ち。第一印象で気にならない人はまずいない。落ち着きがあって、頼れる人物。その上、バスケ部のエース的人物とくれば、思春期の少年少女に早くも不平等の意味を教える存在でさえあった。
だから響も、一度ならず「あんな存在になれたら」と想像したことがあった。隣で肩を並べたい。隣に立ちたい。隣にいたい。
そんな気持ちは、二回目の春を迎えたいま、隣にいてほしいに変わっていた。
「……聴きにきて……ほしいな」
加速していく鼓動に反して、太陽が空を往くのに
放課後の音楽室。
奏でるピアノが、響と先輩を繋ぐものだった。
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