第6話 魔力属性検査に行くみたい③
教会の外では優しそうな風貌の司祭が待っていた。
「初めましてジーク・ガーディアン様、ルナアーラ・ガーディアン様そしてアルト様。私は女神教の司教をさせていただいています、ホルスと申します。この度はアルト様が魔力属性検査を受けるという事でよかったでしょうか」
「そうだ」
「わかりました。それではご案内します」
ホルス司教に案内されて教会に入る。
俺たちが教会に入って1番に目に入ったのは巨大な女神像だった。
なんだよあれ、デカすぎだろ。
見た感じ20mくらいあるぞ。
女神像の頭の部分なんて教会の天井ギリギリだし。
おっといけない、立ち止まってガン見しすぎた。
隣を見ると父さんと母さんは俺を微笑ましげに見ている。
ぐっ……精神年齢20歳にもなってそんな目で見られるとめっちゃ恥ずかしい……。
「アルトもやっぱり驚いただろう? 俺たちも初めてきた時は同じような反応をしたもんだ」
へぇー父さんたちも同じような感じだったのか。
よかったよかった、俺だけじゃなくて。
俺だけだったらただの変人のように見られてしまう。
しかしまぁそりゃそうだよな。
入った瞬間にこんなでかい像が見えるわけだから。
その後も少しの間見ていたが、これ以上此処にと留まると他に迷惑がかかりそうなので、ホラスの後ろについていく。
少し歩いて女神像の前まで来るとホルス司教が話し出す。
「それではこれからアルト様の魔力属性検査を始めます。そのためアルト様は祭壇にお上がりください」
「はい! わかりました!」
俺は期待を胸に祭壇に向けて歩き出す。
どんな属性もらえるかなぁ……。
やっぱり男でオタクなら火か雷が欲しいよな。
だって絶対強いじゃないか、それにかっこいいし。
でも確か風とか水も小説では使い方次第では強い属性だったはず。
土はラノベの主人公の属性にも選ばれてたからきっと何かに使えるはず。
もう、何かの属性あったらいいや。
そう言えばスキルも貰えるんだったな。
正直スキルは別にそこまで希望はない。
俺的には魔法が使えればそれでいいし。
色々と考えながらも祭壇に立つ。
「アルト様、よろしいですか?」
「はい! だいじょうぶです! よろしくおねがいします!」
ホルス司教に聞かれたため元気に答える。
ホルス司教は俺の返事を聞くと水晶を準備し始めた。
……なるほどね。この世界は水晶に手を置くタイプなのか。
これもテンプレだな。
「それでは始めます! ……大いなる女神よ……人の子アルスに才をお与えください……では
アルス様はこの水晶に触れてください」
ホルス司教に言われた通りに水晶に手を置く。
すると目の前に文字が浮かび上がってきた。
___________
アルト・ガーディアン
属性
・無属性
スキル
・銃制作
___________
……
…………
………………
……………………終わったぁ。
「「「「「……」」」」」
……魔法属性ないじゃん。
え、まじですか?
あっ……俺の夢が一気に崩れていくわ。
転生者にはこういう時大体強い属性か全属性じゃない?
なのに無属性……あんなに魔力増加の鍛錬頑張ったのに……。
俺がものすごく落ち込んでいると、1番に立ち直ったホルス司教が気まずそうな声で言う。
「……アルト様には魔力属性がありません……」
続けて立ち直った母さんが叫ぶ。
「う、嘘よ! もう一回調べてよ!」
「いえ……しかしこの検査に間違いはないので……」
再び静寂が支配する。
ま、まぁ魔法は取り敢えず置いておくとして……スキルも見てみよう……。
じゃないと俺のガラスメンタルが粉々になっちゃう。
えーとスキルは【銃制作】か……。
…………んんん?
……おおぅ……このスキルは端的に言うとこれが俗に言う転生者特典ですね。
だってこの世界に銃器なんてないし。
……おぉぉぉ!マジかぁ!ヤバい、めっちゃテンション上がってきたぁぁ!
これって頑張れば電磁加速砲の銃バージョンとか作れるわけでしょ!?
心の中で大興奮していると、周りからはものすごい落ち込んでいると思われていたのか、父さんが気まずげに話しかけてきた。
「ア、アルト、そんなに落ちこm「いぃよっっしゃあああ!!」え?」
「「「え?」」」
俺が思わず猫被るのを忘れて雄叫びを上げると、みんなが困惑した顔で俺を見つめてくる。
おっとやってしまいました……。
あまりの嬉しさに周りのことを一切考えずに発狂してしまいましたね。
そう言えば俺、属性なしの俗に言う【不適合者】になったんだった。
【銃制作】なんて言う素晴らしいものを貰ったからすっかり頭から抜けていたわ。
取り敢えず俺は大丈夫だってことをみんなに伝えないと……。
「とうさま、かあさま! ぼくはだいじょうぶです! このすきるのつかいかたもわかったので【ふてきごうしゃ】でもぼくはきにしません!」
俺が元気に言うと、大人たちは呆気に取られた顔をしていた。
なんか大人がポカーンとした顔見るの面白い。
俺ちょっと性格悪いかもしれん。
すると突然父さんと母さんが笑い出した。
「あっはっはっは! さすが俺の息子だ! そうだな、属性がない【不適合者】でもスキルが良ければいいよな! アルトは男だな!」
「そうね! 属性がなくたってアルトはアルトだしね! アルトは天才だからきっと大丈夫だわ! ちなみにアルトは私の息子よ」
「むっルナよ、アルトは俺たちの息子だろう」
「そうだけど、始めに言ったのはジークよ」
「いやあれはそう言う意味じゃないんだからわざわざ言わなくてもいいじゃないか」
なんで親同士で喧嘩してるんだよ……。
正直言ってしょうもない、子供みたいな喧嘩だな……。
「……このご様子だと、アルト様は苦労しているんですね」
そうなんだよ、よくわかってるじゃないかホルス司教よ。
この人たち毎回喧嘩していることの原因がしょうもないんだよな。
ただそれは子どもの俺が言ったら不審な目で見られそうな気がするし適当にはぐらかすか。
「とうさまもかあさまもとってもやさしいですよ!」
俺の返答がホルス司教にとっていい回答だったのか穏やかな目で言ってきた。
「それはよかったですね。魔力属性検査の結果は良くなかったですが、アルト君なら大丈夫でしょう。私も応援していますよ」
「はい! ありがとうございます! ホルスしきょうさま!」
……ホルス司教ってめっちゃいい人じゃん。
ラノベでは教会の人は大体腐っているのがテンプレだが、この人は間違いなく素晴らしい人だな。
俺の尊敬できる人物として記憶しておこう。
俺とホルス司教で仲良く話していると、やっと喧嘩が終わったのか俺たちの話に入ってきた。
「アルトそろそろ帰るぞ。司教とは仲がよさそうだったが話があったのか?」
へぇ……喧嘩している間にもしっかり俺たちのことを見ていたのか。
さすが元冒険者だな。
これだも母さんも俺に気を配りながら喧嘩をしていたのだろう。
喧嘩はしてほしくないが。
「はい! ほるすしきょうとたのしくおはなししていました! こんどまたここにくるやくそくをしました!」
「そうか! そんなに仲良くなれたか! さすがアルトだな!ゴホンっ、それではホルス司教、私たちはこの辺で戻るとする」
「わかりました。それではアルト君また今度会いましょう」
「はい! やくそくです!」
ホルス司教と別れ馬車に乗り込む。
この世界に来て初めての常識人だったな。
ソバスとは全然雑談とはしないし、まず父さん母さんの執事なのであまり会うこともない。
しかし、魔法属性がなかった時は灰になりそうだったけど、スキルも良かったし、ホルス司教のような常識人と交流が持てたし。
それじゃあ明日から魔法やスキルの鍛錬をするか!
その夜は魔力を増やすための日課として、魔力切れを起こしてから寝た。
相変わらずとんでもなく辛かったです。
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どもども、作者のあおぞらです。
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