第12話 落第勇者、この世界の異変に気付く②
「ただいま~」
「あっお帰りおにぃ!」
「おかえり隼人」
俺が玄関の扉を開けて挨拶をすると、遥と母さんの声の声が聞こえると同時に2人とも玄関に集まってくる。
既に2人ともお風呂に入ったのかパジャマ姿だった。
「隼人、今日何でこんなに遅かったの?」
「そうだよおにぃ! 私との約束破って!」
母さんは心配そうな表情をしており、遥は少し怒っている様に見える。
今の時刻は20時過ぎで、普段俺は多分19時位には帰っていたはずなので、いつもの俺にしてはだいぶ遅い方だ。
なので言い訳と言うか事実を話す。
「いや、今日文化祭の買い出しに行ってたんだよ」
「えーおにぃがそんなことする訳ないじゃん。だって面倒がり屋だし」
悪気もなさそうに痛い所をズバッと突いてくる遥。
妹よ、間違ってはないがそれは言わないで欲しいな。
そして母さんも納得した様に頷かないでくれ……。
「本当に文化祭の買い出しに行ってたんだよ……。くじ引きと言う強制的なものでな」
「あーだからおにぃがやるのね。納得したわ」
遥は「なーんだ。彼女さんとデートかと思ったのに」と言って詰まらなそうにリビングへと戻っていった。
そして母さんは「次はもう少し帰って来てね」とだけ言って同じく戻っていく。
「……宮園と買い出しに行ったのは黙っておこう」
アイツはうちの学校では十分に有名人だからな。
そんな奴と俺が2人で買い出しに行って、おまけにプリクラまで撮ったと知られたら何をされるか分からない。
家族には質問攻めに合いそうだし。
そう心に決めてお風呂に入りに洗面所へと向かった。
☆☆☆
俺はご飯を食べて早めに部屋に戻るとパソコンを立ち上げる。
理由は日本でなにか不可解なことが起きていないか調べるためだ。
あんなショッピングモールなんて言う大勢が集まる場所に出現するぐらいだし、何かしらの目撃情報や科学では説明できない事が起きているかもしれない。
それが分かれば目撃情報とかが一番多い所に行けばいいからな。
遠かったら……学校は休むか。
これは家族のためなので学業くらいは後で取り戻せばいい。
「さて……どんな事が起こってるかな……」
そう思って探すこと30分。
「……全然ない……。幾ら何でもこんなに少ないのってあり得なくないか?」
だってあんな目立つモンスターが道路とか通ってたら通報もんだぞ。
それにもし見つかったら間違いなくこの世界の人間なら殺される。
ゴブリンでさえ、この世界の格闘技の世界チャンピオンとまでは行かなくてもプロくらいの強さはあるからな。
「なのに何も無いと言う事は……」
可能性としては俺だけしか見えないか、
まぁ可能性としては若干前者の方が高そうだな。
だって俺、多分世界唯一の異世界転移経験者で記憶やスキルまで持っているし。
だが後者も無きにしもあらずって感じだな。
もしかしたら俺の他にも異世界転移経験者がいるかもしれないし、その人の子孫は代々スキルを継承するとかももしかしたらあるかもしれない。
もしそうなら俺はスキル使わないほうが良いまでもある。
スキルにはスキルの発動を感知するスキルもある。
俺の感知もその1つだ。
まぁ発動中じゃないと気付かないって言う欠点もあるが。
俺は更にインターネットの記事や新聞を調べて行く。
すると俺の目に1つの記事が写った。
「『出現する異能者』……?」
基本インターネットの情報はこういう時は殆どがデマだが、俺は無性にそのタイトルが気になってしまった。
試しにクリックしてみる。
「えっと……何々?」
『このページは全て本当のことです』
「早速嘘くさいな……やっぱりデマだったか?」
俺はそんな気持ちになるが、まだ序盤も序盤なのでもう少しだけ読み進めてみようと思う。
『最近何か貴方の周りでおかしな事がありませんでしたか? 又は自分が実際に不思議な出来事にあったなど。
このサイトはそんな貴方の悩みを解決するためのものです』
「…………読むの辞めるか?」
あまりにも嘘臭くなって来たためスワイプの手を止めてしまうが、その次の文章に俺は目を瞠ることになってしまう。
『胡散臭いとお思いになるでしょうが、取り敢えず私の話を聞いてください。
最初に言っておきますと、私は――異世界転移経験者の孫であり、現異能者の1人です。
異世界転移には私の祖母が遭っており、祖母が言うには「私は高校2年の夏にクラスの生徒と転移させられ、魔王を倒す勇者となりました。
そして魔王を倒し帰ってくると、現実では1年が経っており、私だけ記憶を引き継いでいましたが、スキルはありませんでした」と言っていました。
そして祖母が祖父と結婚して出来た子供に、何と祖母が持っていたスキルの下位互換にあたる異能が発現したそうで、孫である私にも親と同じ異能、【探索】が受け継がれています。
これである一定の人は信用出来たと思います』
「――――――は?」
自分の口から思わず呆けた声が出てしまう。
まさか先程自分の予想していたことがドンピシャで当たってしまった事と、その異能の名前を聞いたことがあった事で、少しの間スワイプすることも忘れて放心してしまっていた。
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