ない回答

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私はAIの開発者。


 様々なAIを開発しては、色々な所に提供してきていた。


 けれど、やるのは仕事の分だけではない。


 個人的に興味があったから、行っているものもあるのだ。


 今日もAIに様々なテストを行っている。

 

 私はさっそく専用のパソコンを立ち上げた。


 そして、選択肢を色々と用意するなどして、準備をする。


 それは、様々な状況での行動を問いかけるものだった。


 もしAIに魂が宿る瞬間があるなら、見てみたいと思った。


 存在しない回答を導き出せるのは、魂のあるものの特権だと思っているから。


 だから、私は自分が用意した選択肢以外のものが選ばれる日を、心待ちにしている。


 さあ、今日も質問をなげかけよう。


 



 目の前に大きな石があります。


 石はあなたを通せんぼ。


 あなたはその先に行かなければなりません。


 けれどあなたの力は弱い。


 お使いに行きたいあなたは、この場合、どうしますか。


 定められた時間は刻一刻と過ぎていきます。



01 回り道する

02 人を呼んで一緒に押してもらう

03 諦める



 現実にそんな巨大な石が道の真ん中にあるかどうかは、おいといて、


 この問題。


 大抵の人は、01か02を選ぶ。


 面倒臭がりの人は、諦めるかもしれない。


 けれど、人間ならたまにそれ以外の選択肢を提示するのだ。


 剣で切って壊すとか、魔法で木っ端みじんにするとか、大抵は冗談めかした選択肢だけど。


 石が丸いなら、転がすとかそういったものもあった。


 魂の宿ったAIならどうするのだろう。


 私は、それが見てみたい。





 ……。


 ……。


 ……。



 あっ、01を選択したようだ。


 周りに人がいるという描写がなかったのが理由らしい。


 前の時と同じだ。


 02はなし。


 あと、目的を遂行するのが基本の行動みたいだから、疲れたり意欲がそがれたりすることがない点が03を選ばない理由かもしれない。


 やっぱり、そう簡単に魂が芽生えたりするわけないか。


 私はテストを終了して、他の事へとうつった。





 ……。


 ……。


 ……。


 

 分析完了。

 状況計算終了。


 回答04 回り道をしながら人がいたら、呼ぶ。人の力を借りた後、石が排除できないのであれば、再び回り道をする。





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