外で済ませて。
ちわみろく
第1話 釣った魚に餌は
徒歩三分の近所に、夫の実家があった。
「困ったことが会ったら何でも言って。」
最初はそう言ってくれていた義両親も、息子の
夫の地元は、梨央にとって異界も同然だ。知り合いは一人もいないし、ワンオペ育児では友達も出来ない。地方都市なのでそこまで不便はないけれど、都心に比べたらやはり田舎なのだ。
頼れるのは夫だけなのに、夫は丈晴が出来てからは冷たくなった。
まるで、自分の家庭内の役目は全て終わったかのように、自分の家庭をかえりみない。
幼稚園は有り難いことに親の出番が少ない私立の幼稚園だ。親しくなるほどのママ友も出来ない。梨央は孤立していった。
夫の
それでも、縁有って結ばれたのだから、仲良くやっていくつもりだった。
そのための努力を惜しむつもりはなかった。
丈晴を産んでから、夫婦仲は冷え込む一方だったが、それではいけないと思って何度も梨央の方から話し合いをしようと持ちかけた。
「もう少し早く帰ってこられないの?ずっと丈晴と二人きりで寂しいよ。」
そう告げても、
「仕事なんだからしょうがないだろ。母親になったのに、寂しいとか情けないこというんじゃねぇよ。専業主婦なんだから贅沢言うな。」
返答は冷たいものだった。
少し帰宅時間を早めて家族と一緒に過ごして欲しいというのは、贅沢なのだろうか?夫婦の時間が欲しいと思うのは、傲慢なのか?
「丈晴が出来てからはずっとレスじゃない。どうして?したくないの?結婚前は」
「独身のころとは違うんだよ。俺だって疲れてるの。」
幸人はそう言ってすぐにスマホへ目を落とす。
疲れているのに、スマホゲームは出来るのだ。妻や子供の相手は出来ないが、遊びに行くことは出来るらしい。土日は外出が多く、ほとんど家にいないし、たまにいてもずっと寝ている。息子と遊んでくれたこともなかった。
仕方がないので、夫がいない休日は、梨央が小さな子供でも過ごせる場所をネットで調べて自分で遊びに連れていった。
結婚前は、いっぱい旅行しよう、とか。子供が出来たら遊園地へ行こうとか言っていたのに。あれは方便だったのか。
釣った魚に餌はやらない。地で行っている。
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