すすきの原で、きみを待つ
@sa4mi
第1話
郊外の河川敷というものは、特にススキがのさばる季節になるととりわけ秘密を隠すのにうってつけの場所であると誤解されやすい。だが、それは大きな間違いで、河川敷から外は見えずとも、土手上からは何もかも丸見えなのだ。男女の逢瀬も、プロキシマケンタウリの船も、誰かの死体も。
うら若き女子大学生・
「で、あんたは芸術祭でこれを出品するわけね」
写真サークルの部員が10人も入れば貸し切り状態となるいつもの居酒屋。同期のさくらがマチ子の現像した写真を見ていた。「そ」得意げにあごをあげたマチ子は、エイヒレを噛みちぎって見せた。3枚の写真には、すすき野原、すすきで覆われカモフラージュされた秘密基地、そしてそこで倒れる渾身のマチ子が写っている。
「この秘密基地はまさかひとりで作ったの?」
「いやぁー、留守のところを……」
視線を奪われる。2学年上の
「おい、聞いてんのか」
「聞いてる聞いてるー」
「これ、最後の1枚だけど、なんで寝てるわけ?」
マチ子は三咲から視線外し、さくらの方に向き直る。
「……ね、あたしの夢、聞きたい?」
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