雨の匂い
雲が厚くなって
雨の匂いがしている
病院帰りの午後に
ぽつり、ぽつりと
落ちてきた滴に
慌てて小走りになって
家路へと急ぐ
病院の待合室で
声高に悪口を言う声が
耳に飛びこんできて
気づかれぬよう席を移る
聞きたくもない誰かの陰口は
不快な悪臭のようで
気持ちを沈ませる
みんな疲れているのだろう
無意識にささくれだった心が
当たることのできる弱い存在へ
苛立ちをぶつけている
陰険な呪詛のようなそれは
診察室に呼ばれても
後ろで続いていた
雲がまた厚くなって
雨の匂いが強くなる
病院帰りの午後に
ぽつり、ぽつりと
落ちてきた滴に濡れながら
わたしはいつのまにか
足を緩めていた
できることなら、この雨で
記憶を浄化されたいと願いながら
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