悲しくはないですか?

すれ違いざまに

耳に飛び込んできた会話

「爺さん、婆さんのくせに……」

傲慢ごうまんな吐き捨てるような口調に

思わず振り返る


そこには

高そうなスーツを着こなした

中年男性らしき二人が遠ざかる姿


無造作に投げ捨てられた

ソレは耐え難いほど醜かった

何があったのかは知らない

だからわたしには

切り取られた

その破片だけしかわからない

それでも悲しくなるような言葉だった


誰もが、歳をとって

誰もが、その場所に辿り着くのに


その時に

自分がこんなふうに言われたとしたら

あの人達は

悲しくはならないのだろうか



ポイ捨てられた煙草が

踏みつけられているのが見える


夕暮れは

雑踏に佇むわたしを

いつのまにか深くなった

闇に溶かしていく

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