わかっていたのに

カサブタを剥がしてしまった

当然のように血が出て

それは思いのほか止まらなくて

そんなこと、わかっていたのに

だからどれだけムズムズしても

盛り上がったカサブタのことを

考えないようにしていたのに


何重にもなっていたカサブタは

剥がす時は呆気あっけないほど

気づけば掻きむしっていた

爪を染める赤

痛みよりも抑えきれぬ苛立ち

そしてこんなふうに血は

やはり流れるのだという皮肉


血を流した傷痕あと

またカサブタになるだろう

封じ込めて塞いで

それでも消えることはない

そんなあたりまえのこと

わかっているのに

わかっていたのに


醒めた目をしたつもりでも


心は、殺せなかった

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