Track 1-7
【センターへの思い……そうですね……やっぱり、自信が必要なんじゃないかなって思うんですよ。
何人グループだろうと、センターになれるのはやっぱり一人とか二人とか、一握りなのは変わらないわけで。そのセンターに選んでくれる事務所の人がいて、俺がセンターであることを納得してくれるファンの方がいて、俺以外にセンターできる人間はいないって自分自身が思っているからこそ、センターのポジションを守っていられるんだと思うんですよ】
【センターはやっぱり、グループの顔だから。センターが変わるなんてなったら、それはグループの在り方も変わることになるじゃないですか。会社の社長交代みたいなものだと思っていて。簡単に変えられるポジションじゃない。だからこそ、自分がこのグループの雰囲気というか、オーラを支えているんだって。
もちろんメンバーがいて初めて、センターという位置に意味が出てくる。みんな葛藤はあるだろうし、メンバーには感謝しかないです。でもやっぱり、自信過剰なくらいにセンターのプライドを持っていないと、このポジションでいることはできないなって】
【ライバル、ですか……やっぱり意識しますよ、そこは。事務所の後輩もそうだし、他の事務所のグループも結構チェックします。どういうコンセプトで活動していて、センターがどんな子で、何が武器なのか。
自分の信念を変えるつもりはないけど、武器とかキャラが被らないようにしなきゃって思うことも多々ありますね。まぁ、俺を意識してくれる子が出てきたら、それはそれで嬉しいけど(笑)】
☆
「
新たな練習生のユニットが結成されて、およそ2週間。
デビュー組の
初めての雑誌撮影で、
しかし、李智の体を借りているだけの
「李智くん、両手で顔包んでみて。そうそう。あえて歯は出さないで、ニコッと……そうそうそうそう! あぁっ、可愛い! 次は5人と4人で分かれてみるのもいいなぁ……まず撮影データ確認するね」
それから2グループに分かれて撮影を行い、開始から3時間かけて終了した。
その翌日、正式にプロデューサーとなった伴南が、ポニーテールを揺らしながら笑顔でレッスン室にやって来た。
「昨日の撮影、お疲れ様。一個報告なんだけど、雑誌に掲載されるからさ、ユニットの名前が必要でね。ほら、ハイグリの練習生! ってだけじゃ、つまらないじゃない? あなた達が選抜された実感もないでしょう。
だから暫定で、
いつも通り、亜央をセンターにしてダンスレッスンが始まった。いつものスパルタスキンヘッド振付師が、伴の後を引き継ぐ。
「今日は新しい振り付けで、
「え、マジか」
「おう、マジだ、伊佐」
亜央の二つ右隣にいる伊佐からは、早速興奮が伝わってくる。このユニット——もとい、Next Gleamingにとって、初めてクールな楽曲が来たので嬉しいのだろう。だいたいいつも、ポップかキラキラばかりだったから。
AviewSEはΦalのプレデビュー曲、つまりデビュー直前に宣伝としてリリースした曲だ。当然、亜央は何度も何度も踊り込んでいる。振り付けが変わっても、すぐに踊りこなせる自信があった。
李智と体が元に戻るまで、センターを守るために、全力を尽くさなければならない。
かりそめでもセンターとなれたのだから、責任を持って務めなければならない。
亜央は自身のロールモデル、
練習生のユニットだろうと、センターに選ばれるのは一人だけ。自分こそが、過剰なくらいの自信を持ってでも、このNext Gleamingの看板を守っていかなければならないのだ。
「まずサビからやって行く。李智を一番前にして、2列目が未地とキラ、3列目が伊佐と菜生と……紗空。4列目が残りの3人。三角形に並べ。……もう少し広がれよ、そう。
……で、最初の『AviewSE』で李智のソロ。2回目の『AviewSE』で李智と2列目。3回目で3列目まで、4回目で全員の動きになる」
振付師が踊って見せた。
まず、両足はピッタリと揃えた直立の状態。そこから右手を腹部に当て、上半身を時計回りに回した後、左手を二度回して同時に左足を左に出し戻す。これをセンターの亜央は4回繰り返す。
4回目まで終えたら、右、左の順に肩、次に首を動かし、両手で頭を抱えて反時計回りに回したら、最後は右に右足を出すと同時に、パーに開いた右手を正面に突き出し、右足と右手を体の中心に一気にしまい込む。
亜央がΦalとして踊っていた時はもっと可動域が大きく、しかもユニゾンだった。今回は全身を大きく伸ばす振り付けはない代わりに、カノンで躍動感を出している。
このNext Gleamingというユニットが、Φalのほぼ倍にあたる9人で構成されているからこそ、映える振り付けにアレンジされていた。
いつもなら
でもこの振り付けなら、初めから亜央だけに視線が集中する。亜央を中心に、全てが動き出す。そう思うだけで、胸が高鳴った。
Next Gleamingには、ダンスをメディアで披露する機会はまだ与えられていない。地上波はもちろん、ハイグリが持っている動画チャンネルにも出演は叶っていなかった。唯一の発表の場は、練習生と元
でもそこで、練習生と先輩の視線を集めることができたなら。
一瞬でも、センターの楽しさを知ることができたなら。
絶対に、見せつけたい。
こいつはすごいと、見る者を驚かせたい。
振付師が曲をかけると、亜央は鋭い眼光で己の動きと向き合うのだった。
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