短編集 転生だと思ったらリサイクルだった。
北宮 高
第1話 転生だと思ったらリサイクルだった。
暗いが、どこからか? 光りが入っていた。その光が私達を囲んでいる金属の壁に反射していて景色は見る事ができた。もうすぐ零時になる。可愛い子供達を体の中に入れていた。
今日は子供は大勢来た。でも、もうすぐ私の子供達を狙って怪物が来る。
昨日の夜は三匹に襲われて、子供が三人も食べられてしまった。
私は何も出来なくて、ただ、見ているしかなかった。
怪物は黒に近い茶色の艶のある金属のような鎧を纏っていた。
廻りは不気味に静まりかえっていた。
時々、「ブーン」と長い音が聞こえた。私が来てからも時々聞こえた。
私のいる地区より、右の地区に白い大きな建物とゆ
うか? 高い箱があって、其処から聞こえてくる。
何かを作っているのか? たまに「ドシーン」と音が聞こえた。
私は昨日の朝に使命を果たすために此処に来たが、その音は昼間に多く聞こえた。
子供達の中にはそこの白い箱から来た子もいた。
私は転生した事は微かに覚えていた。
私は転生してから、ここに来る前のことを思い出していた。
仲間は規則正しく並んで待っていた、3日置きに一人ずつ使命に燃えて出ていった。
私達は身分が低く下から二番目と言われた。でも私達より上の身分の高い子守達の情報は教えて貰えなかった。
突然「ジャリ、ジャリ、ジャリ」と音が聞こえた。
奴らが来る! 子供達は「怖い、怖い」と騒ぎ始めた。
私達を保護するために屋根が駆けてあった。それには3か所穴が空いていた。そこから怪物が2匹が金属の壁を降りてくるのが見えた。
そして、穴からあの醜い顔を覗かせた。
又、今夜も子供が食べられると覚悟をした。
窓から中に入りかけたので「止めなさい! 帰りなさい!」と叫んでも無駄だった。
「うるせい! 婆、騒ぐんじゃない!」
「婆じゃない! 私はまだ此処に来て2日目です」
「関係ねえ! そんなに抱えていて重たいだろう、1人位食わせろ」と威嚇してきた。
その時、空気が動いた、何とも言えない嫌な臭いがしてきた。
野生動物の臭いだった。
入ろうとしていた怪物は嫌な空気を感じて、一旦止まった。
急に怪物の体が空中に浮かんだ。「バリ、バリ、グッシャ、グシャ」と音がして怪物の体液が滴り落ちて来た。
もう一匹の怪物は「ジャリ、ジャリ」と音を出して慌てて逃げて行った。
でも金属の壁を登る手前で捕まったらしく、また「バリ、バリ、グッシャ、グシャ」と音がしてきた。
動きが早い、怪物の比じゃない。
異常な状景に体が震えた。それを感じた子供達は静かになった。
窓の外に灰色の物が動いているのは分かった。でも大き過ぎて全体が把握できない。
(大きい、私の子供の全部食べられてしまう。どうしよう)
「ズズー ズズー」私達を覆っていた屋根がズラされてしまった。
(見えた! 怪物の100倍位の大きさだ。化け物だ)
(こっちを見た、二つの目が光っている。側に来ないで!)
化け物は近づいてきた。そして、私の体の中を覗いてきた。
「止めて! 子供は食べないで!」
「そんな物たべねーよ、中に怪物がいないか? 見ただけだ」
「あー良かった。怪物を退治してくれてありがとう」
「退治した訳ではない、餌だから食べただけだ」
「あー 歯がむず痒くなってきた。かじらせろ」と歯をむき出し向かって来た。
「止めて、私に危害を加えると酷い目にあうから」
「誰からだ?」
「私の御主人様から」
「ああー あの鈍い、体だけ大きい
「ぎゃー」・・・・私は体の3分の1程かじられて、可愛い子供の半分を暗い闇の中に落してしまった。悲しい・・・・
朝、鳥の声が聞こえて来た。私は悲しいままだった。
何時もの時間に御主人様がやって来た。
異常に気が付き屋根を持ちあげた。私の体を少し上げて、子供がこぼれないようにしてくれた。そして、屋根を掛けた。
その日も子供達は次々にやって来て私の体に入った。
恐れていた夜がやって来た。
零時になった。怪物は来なかった。やはり化け物の話が広まっていたらしい。
化け物は来るだろう。又、歯がむず痒いと言って今度は殆どかじられるだろう。
子供達も全て暗闇に落してしまう。
覚悟をしていると、右の地区の白い箱の下から「ぴー」と声がしたが、また「ブーン」と何時もの音にかき消されてしまった。
とうとう化け物は来なかった。
朝、鳥の声がして、何時もの時間に御主人様がやって来た。
今日の朝で私の使命は終わった。私と子供達は別の場所に移された。
そして使命を終えた安堵感に侵っていたら、あの嫌な野生動物の臭いがして来た。
不安になり見渡すと、この前の化け物がこちらを見ていた。
「怖い!」
でも厚い紙に挟まれていた。
粘着物で身動き出来ない状態だった。暴れていたようで、彼方此方から血が出ていた。
「助けてくれ!」
「もう、諦めなさい、私を襲わなければ、御主人様に気付かれなく、トリモチも置かれなかったのに、可哀そうね」
「これから俺達はどうなるのか? 」
「ゴミの焼却場で燃やされるの」
「いやだー!」
(私はペットボトルから生ごみネットに転生した。焼却される前に転生しなければ)
いや、無理だろ? それは転生ではなく、リサイクルだろ。
「あなた! そこのゴミを集積場に出して来て! 袋の口も縛ってね」
「また俺かよ・・・・これも生ごみで出していいのか?」
「生ゴミで良いの!」
「でも、生きているみたいだけど?」
「どうせ燃やされるから関係ないわ。早く出して来てちょうだい!」
御主人様達の声を聞きながら、次は何に転生しようかと考えた。
(まあ、焼却場に着くまで決めれば良い)
何処にでもある日常の話でした。御愁傷さまでした。
短編集 転生だと思ったらリサイクルだった。 北宮 高 @kamiidehedeo
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