【愛のカタチ】
asato
【愛のカタチ】
『このサラダ、ドレッシングかけすぎじゃないかしら?』
ドレッシングを落としながらレタスを口に運ぶ妻の姿を見て、俺は笑った。
「確かに…。さすがの俺でも、これはかけすぎだと思うなぁ」
一泊二日の温泉旅行。今夜のディナーは飛騨牛のコース料理。
せせらぎの聴こえる席で、夜景を見ながらディナーを食べている。
「グリンピースは苦手だけど、これはいけるなぁ」
『うん、美味しいね』
運ばれた緑色のスープを飲むと、体が温かくなった。
スープを食べ終えたタイミングで、メインのステーキが運ばれてきた。
「肉好きだよね。どう?美味しい?」
『このお肉、柔らかくて美味しい!』
ステーキを頬張る妻の表情を見て、俺はまた笑った。
嬉しそうなその顔を見ていると、俺まで嬉しくなり、飛騨牛のステーキがもっと特別なものに変わった感じがした。
夕食後、しばらくしてから浴室に向かった。
個室のバスタブに蛇口から温泉を注ぎ、湯もみして適温にする。
少し広めのバスタブに垂直に座り、俺にもたれながら妻が寝そべった形で肩までつかれるようにした。
すると、ゆっくりと俺の腕や肩にお湯をかけてくれた。
浴室から部屋に戻り、窓辺の椅子に座った。少々のぼせたようだ。
ぼーっとする俺の向かいで、浴衣姿の妻がドライヤーで髪を乾かす。
髪が長いと大変だなぁ…と思いながら妻を見ていると、乾かし終わった妻が眼鏡をかけた。
化粧を落とした眼鏡姿の妻を密かに気に入っている俺は、妻を見ながら微笑むと、キョトンとした妻が首を傾げた。
「ううっ…寒い…」
『身体冷えちゃったんじゃない?お布団入って?』
俺はうながされるまま布団に潜り込み、吸い込まれるように眠りに落ちた。
翌朝…。
目を覚ました俺は朝食に行く準備をし、レストランに向かった。
運ばれた搾りたてのオレンジジュースを飲みながら景色を見ていると、遅れてきた妻が向かい側の席に座った。
ベーコンエッグを食べている俺を、優しい眼差しでジーっと見つめる。
「ねぇ、そろそろダメかな…?」
俺は食べ終えた皿を見たままそう問いかけると、妻は俺の顔を覗き込む。
「いつでも君と一緒だけど、俺、君に触れたいんだ…」
潤んだ俺の顔を見てクスッと笑いながら、妻は俺の方へ手を差し出した。
俺は手を伸ばし、妻の手に重ねる。すごく懐かしい温もりを感じた。
『一緒に行きますか?』
優しく微笑みかける妻に、俺も微笑み返す。
「うん、ありがとう」
重ねた手を握ると、俺はふわっと軽くなり、妻が纏う優しくてあたたかな光に包まれた…。
【愛のカタチ】 asato @asato1019
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます